詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

▪️2024年度の「北の聲アート賞」、詩人・哲学者の花崎皋平さんの最高賞(きのとや賞)ご受賞が本日の北海道新聞で報じられています。心よりお祝い申し上げます。

▪️2024年度の「北の聲アート賞」、詩人・哲学者の花崎皋平さんの最高賞(きのとや賞)ご受賞が本日の北海道新聞で報じられています。心よりお祝い申し上げます。
 僭越ながら今年度より文学部門の選考委員を務めさせて戴き、震える手で推薦書を書かせて戴きました。

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表現部門:文学 花崎皋平

 「私は対自然関係の人間中心主義を乗り越えて、生命= 生態系の持続を自己の実存的自覚に位置付けるべきことを説いた。 」「 自分の生存の根底において超越的な働きに接しているという直感を 抱いている。そして、それは新しい時代精神エートス) への模索でもある。」(『生きる場の思想と詩の日々』)。
 個人、歴史、社会、超越を包括する全体を考察する哲学者は、 哲学的省察からの透徹な理論を社会的実践に結合させてきた。 ベトナム反戦運動、成田空港や伊達火発、 泊原発などの地域住民運動アイヌ民族復権運動への支援連帯活動、ピープルズ・ プラン21世紀国際民衆行事で世界先住民族会議の運営事務局に参 加(1989年)、札幌自由学校「遊」の開設(1990年) による〈共生〉の学びの実践などの膨大な活動。 真の人間的連帯のありかたを模索し、自らの「生きる場」 と社会変革の可能性を問い続ける。
 行動する哲学者は詩人である。「私は若い頃、詩人パブロ・ ネルーダの「マチュピチュの頂」を頂点とする叙事詩「 大いなる詩」に感銘し、強い影響を受けました。 ネルーダのこの詩では、 南アフリカ先住民族が歴史の主人公として登場していました。 その背景があったので、北海道に住んでからは、 この地の歴史を作ってきたアイヌ民族の口承詩、 叙事詩に関心をもってきました。」( 第43回小熊秀雄賞受賞の言葉)。 小熊秀雄の切り拓いた叙事詩の地平を引き継ぐ長編物語詩 『アイヌモシリの風に吹かれて』は、「 詩の語り手のヴィジョンの位置が、はるかな未来に置かれ、 その未来から見られているという発明」(選評・工藤正廣) が高く評価された。
「混迷と争乱を深める世界の中で、 理性と平静さと希望を持ち続けるにはどうしたらよいか、 平和と食べるものと日常の安全が村や町の民の一人一人に保障され るためにどういう努力をはらうべきか、 聴くべき声に耳を傾けるとともに、みずから考え、 そのための行動をささやかでも続けたい。」(『「共生」 への触発―脱植民地・多文化・倫理をめぐって』)。 21世紀の人類の問題に対峙し、歴史を反省し、 私たち自身が新世紀を力をあわせて切り拓くための気づきと勇気を 与えてくれる、人類への(未来からの)まなざし。 社会のシステムと国家の枠組みを超えて〈共生〉 の関係を追求する営みの可能性。 私たちはどのような時代、社会、世界を創ろうとしているのか。 精神の根底にある畏敬する静かな大地がはげしく問う。 北の哲学者・詩人の教えが未来へ受け継がれていくことを祈念し、 心からの感謝をこめて、北の聲アート賞を贈呈したい。(文責・柴田望)

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 2024年度、記念すべき第10回目の「北の聲アート賞」(文化塾サッポロ・アートラボ[サラ])の贈呈式は、札幌市豊平館にて10月19日(土)午後6時より開催となります。ご受賞された皆様へ心よりお祝い申し上げます。

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