■尊敬する伊藤芳博さんより、「CASTER」号外15-16をお送り賜り、心より感謝申し上げます。『詩の檻はない』の活動についても貴重な視点を与えて戴いております。ソマイア・ラミシュさんはロシアで認められた詩人であり、西欧価値観で女性の権利を訴えているのではなく、現実の危機に対峙しています。
東西に単純化できない問題です。パシュトゥーンの掟やイスラムの復古主義的解釈を日本人が肯定して押し付けるのは間違っています。西洋流の民主主義の押し付けでなく、「旧習の変革をもとめる今のアフガン人」の闘いに注目しなければなりません。
ソマイアさんは家族も友人も危険に曝されています。現実に今のアフガニスタンのことを語っています。「伝統」を守るという言葉で、人権の侵害を擁護することはできません。旧習の変革については、タリバン政権内でも意見が割れはじめています。
日本にも「伝統」はありますが、女性が医師や学者になると「伝統」違反だよ、夢見ちゃダメだよ、処罰するよ、という社会ではありません。
「伝統」に逆らうと刑務所へ入れられる。服装の違反で捕らえられ、石打ちなどの罰を受ける…アフガニスタンでは今も普通に起きており、同じイスラム圏でも批判の声があがっています。
現地のニュースを見ていると、旧政権の担当者が不審者に殺害されたという記事が今でもたくさんあります。ジャーナリストの逮捕行方不明は数知れず…
米軍が撤退したアフガニスタンの状況を、米軍が戦後からずっと撤退していない日本で想像するのは非常に難しいことと存じます。
日本での『詩の檻はない』の活動は、アフガニスタン支援というよりも、実際にはソマイア・ラミシュさんという詩人のメッセージに耳を傾け、詩のあり方について地球目線で考える活動です。勧善懲悪のような抗議活動ではありません。
世界を認識し、知ろうとする、「異質なものに出会う感覚」。今の日本を、世界を考え、関係の全体性を考える文学活動の一つであると考えております。戦後詩の出発点や戦後の思想の原点について考えております。
だからこそ、今回伊藤芳博さんの「CASTER」にて、重要な視点のメッセージを戴いたことを心より感謝申し上げます。
じつは昨年私は、1月に高橋純先生よりこの活動へ戴いたメッセージを、詩誌「フラジャイル」20号に掲載し、フランスペンクラブのオンラインイベントで英語で朗読しました。
あらゆる活動は「自己批判性」を失ってはならないと信じています。「現代詩手帖」や「詩と思想」にも紹介した1965年の『北海道=ヴェトナム詩集Ⅰ』には戸沼礼二による「『ヴェトナム詩集』は傍観者の『詩集』である」 という痛烈な批判の文章が掲載されていました。また詳しくお伝えしていきます。
私がこの『詩の檻はない』の活動を行うことに、2023年当初は先輩詩人の皆様よりお叱りの声を多数戴きました。「亡命するのがおかしい」とか「ウクライナをやりなさい」とか、もうめちゃくちゃでしたが(笑)、、
つまり詩に社会性を持たせるのが悪い、海外の詩人と関わるなとか、ヒーローごっこと揶揄されたり(笑)、様々な貴重なご指導を賜り…旧来の詩の世界にある閉塞性について考えさせられつつ、しかし最初からご理解くださる方も多数おられました。
対話を重ね、だんだん応援の声を戴きますことが多くなり、ご理解を戴くには努力と時間が必要であると学ばせて戴きました。今は感謝しかありません。貴重なご意見を戴いたり、この活動に心を寄せてくださる皆様、ご参加戴いております皆様へ心より感謝申し上げます。