(見ると見られる)運命と本質の距離
秘密のか弱い野獣
約束を忘れるこの世にはない
夢中で時間を途切れさせ
対決させる
(書いて読まれる)
名づけられない名前を与えたとたん驚きや怖ろしさも
消えて理解したと錯覚させるあなたがあなたをあなた
だと知る前の純粋さに逆らえないわたしがわたしを
わたしだと知る前を名づけたり自覚したり反省
することはできない創造と創造物の隙間に落ちる夢中で
名づけられないものを名づけることをしない儀式
(読んで書かれる)
名づけられないものとして生きてはならない問題に介入
して人間であることの肯定や否定として闘争する
無限の感情や言葉にかれじしん洗い流される化石
叛逆してもしなくても勝利も敗北もどこからきた?
故郷を失い郷愁に焼かれる儀式人間が敗北に耐える
日常を意志の枠から取りはずす
(幻視者と幻)
夢よりも克明にそこらじゅう映しだされる
それとそれを創造することの対立への
怖れや驚愕に歯向かう神々の空虚さの
間に立つ読み手であることをとうに忘れる
*
ー安部公房『無名詩集』に収められたエッセイ「詩の運命」を読んで