「バラバラな日々がまとまって、気づけば一年がちゃんと経ってる/今年も終わり、来年が来る。月の終わりライターに再点火する」(ゐLL AuguST)
■2022年8月14日(日)、コトバスラムジャパン2022、第2回目の北海道予選大会を俊カフェさんにて開催。
町田すみさんの多大なるご協力により、12名フルエントリーで当日を迎えることができました。
第1回の北海道大会に参加された皆さんがTwitter等で告知してくださり、
町田さんはスペースを開いてくださったり。本当にありがとうございます。
三木悠莉さん、DJ K.T.Rさんが北海道札幌へ来てくださったこと、
会場とオンラインで参加された詩人の皆さんのパフォーマンス、すべてが夢のようで、
今日は大晦日ですが、私にとっては紅白歌合戦等よりも
俊カフェでのKSJ北海道大会が未だに重要であり、大晦日に8月の動画を観ておりました。
当日は主催・司会という立場から、皆さんの詩作品や朗読への感想を
あまり申し上げることができませんでした(我慢しておりました^^)ので、
とても遅くなってしまい恐縮ですが、KSJ北海道大会を応援戴いた皆様へ感謝をこめて、
今年、言葉の天才たちに出会えた喜びを、ここに記したいと思います。
現地とオンラインのハイブリットでしたが、時空を超えた一体感が生まれていました。
(作品のタイトルを伺っておりませんでしたので、書くことができず申し訳ございません。)
*
■YouTube動画はこちらです。下記にスタンプのタイムを記します。
https://youtu.be/XzYxEiWnJpk
■《カリブラージュ》
17:19 俊カフェさんのオーナー、古川奈央さんの詩篇「種」。この日のカリブラージュのために書き下ろして戴いたと伺い、感激。
「ポエトリーリーディングはギフトだ。」
「魂のどこかに宿った言葉の種」との交信がこれから行われるのです。
22:07 古川奈央さんのお父様、詩人・古川善盛さんの「よいしょ」を僭越ながら柴田が暗唱。北海道の詩壇の歴史の中で、とても重要な仕事をされた、伝説的な詩人・古川善盛さん。「扇状地」「野性」「核」…1950年代の「北海道詩集」でも作品を拝見しておりました。
決勝で岡和田さんが名前を挙げられた江原光太さんと「詩の村」を創刊されています。
詩集『鬼郷七番通』の帯に書かれている詩篇を、朗読させて戴きました。
■一回戦 Aグループ
27:10 石橋俊一さん 【現地】
「言の葉」…疑問形に惹き込まれました。
「沸騰したらどうなりますか?ふつふつと逃げていってしまうのですか?」
「言葉がつまってどこにも行き場がなくなったらどうしますか?」
追い詰められているようなのに、自由へ近づいていくような、
核へ近づいていくようなのに、狭められず、どんどん開かれて勇気を与えられるような、
魔術的、催眠術のような疑問形のリズム。「それが言葉なんですか?」
32:24 福士文浩さん 【現地】
「やつら」…「壁の向こうにやつらがいる。」
しゃがれ声で「外にいるのはクズばかりと歌う」「見て見ぬふりをする」…
「やつら」とは一体誰なのか。最後まで分からない。
答えは分からなくても、その問いは共有できるし、
人と人との関りについて根源的な問題を扱った佳作だと感じました。
36:17 Haruka Tunnelさん【現】
当日、どこからともなく現れた、旅の詩人。旅先のKSJ会場で…
「大丈夫、誰が何といおうと、そのチケットはあなたのもの」
「あなたはあなただ…」「帰る場所は一つ…」
映画の台詞のように引き込まれる。
自分はどこから来たのか? 自分とは誰なのか?
根源的かつ哲学的な問いの答えを求める旅なのだろうか。
■一回戦 Bグループ
42:17 藤田恵さん 【現地】
「宝田明」に似た「かっこいい」お父さん。
「夕方になったらお父さんがススキノにトランペット吹きに行くの」
「その後ろ姿がとってもかっこよかったのよー」
話し言葉の忘れられない愛おしいフレーズたち。
決して電子化されない、ノスタルジアの街。
藤田さんのすべての言葉から情景が浮かぶ。
47:38 岡和田晃さん 【リモート】
本大会お一人目のリモート・パフォーマンス
私たちが置かれている状況として、
共感、良心を利用されている状況について。
「銃声というよりも雷のような爆発音…」
この大会は8月ですが、7月に日本を震撼させた事件について、
社会の問題の核を刺すような岡和田さんの詩への姿勢が聴くものを詩世界へ惹き込む。
52:49 YOU_さん 【現地】
「オリオンの彼方から私に降り注いでいる」
「当たり前の日々が終わりを告げる」
一見、子守唄のようでいて、実は世界の終わりを語っている。
「そうだ、あなたと星になるのだ…」
「この思いを抱いたまま眠ってしまおう…」
凄い詩だと思いました。世界は終わる。子守唄のように。
世界ってこんなに優しく、語り掛けるように終わるのか。
■一回戦 Cグループ
1:21:08 依鈴さん 【リモート】
昨年もご参加、ありがとうございます。
本大会で最も感動した作品の一つでした。
「きみがやって来てくれた日」…「きみ」とは誰か?
「初めて会ったきみは画面ごしだった…」
「難語を話した」「よく笑ってよく泣いてよく寝るね・・・」
3分で人間の誕生と成長、書かれていない未来まで想像させる。
膨大な時間が込められている。
1:26:41 HAMさん 【リモート】
いつまでも途切れない、友情の、魔法の歌
「流れるピースなインスタントメロディー」
「最高の仲間と描く傲慢な絵画」
「いまもきつく肩組めるやつ…」
「一つの波紋から大きく和が広がった」
それがコトバスラムジャパンという現象であり
コトバの持つ力なのだと思い、感動しました。
リズムと言葉の芯を感じました。
1:31:42 あさとよしやさん 【リモート】
沖縄からのご参加。ありがとうございます。
コトバスラムジャパンが日本の北と南をつなぐ
風鈴ってこんなにダンスできる音を出すのか、
「坩堝」のようにも聴こえる、様々な発見。
風鈴って宇宙へも行く。UFOの中でも地球と同じように鳴り続ける。
その鳴り方は自分でも言ってみたくなる音色でした。
あまりにも動揺し、「ジャッジ」を「ジャッツ」と言ってしまいました。
■一回戦 Dグループ
1:37:21 しまちちさん 【リモート】
盆踊りの夜、「灯は揺らめく・・・」…恐ろしくリアルであり、
私たちがどういう世界に放り込まれて生きているのかを
思い知らされる、目を覚まさせられるような作品。
読み手、聴き手に想像させる、文学の力。
1:42:22 ゐLL AuguSTさん 【リモート】
突然!現れた新星。「どれもこれもが尊いから・・・」
どの言葉をも尊く輝かせる。
「心が見る夢、肉体を抜ける・・・」
コトバでしか絶対に表現できない。独特な韻の踏み方。
かなり高度な言語表現と感じました。
「サンプル詩は散弾銃・・・」まさに、フリースタイル。
昨年のThaTeacherさんを想い出していました。
1:47:29 松岡真弓さん 【現地】
コトバを文章の流れではなく、結晶させていくような書き方で、
空間・宇宙をぐっと広げる
「心を空にして」「両の掌を上に向け」
暗さを増していく空、雨の雫…
「私の芯を通って両手に溢れる」と言えるのは
真の詩人の感性であり、本物の詩なのだと思いました。
子どもの頃は、空をこんな風に感じることができたのです。
■決勝戦 一巡目
2:23:40 ゐLL AuguSTさん 【現地】
「世界の先端で普遍であれ…」
「存在意義、永遠の少年法、文脈の溶接所、溶ける音さながら法華経、桃源郷、法然の亡霊と踊れよ…」
「赤ちゃんに内在する潜在するじいちゃん。抽出するビリーミリガン…」
ポストモダンの都市のSF小説のようなコトバの肌触り。
いま私たちが生きている世界がじつは異世界。
「書いてるフレーズと即興のハイブリット」とはこういうことなのか…
2:29:55 あさとよしやさん 【リモート】
「雑草は雑草だろう…」「雑草なんてものはありません…」
「雑草」とは何か? 昭和天皇も謎の御言葉を発する。
緩んだ顔の「のび太」とむしる。「ドラえもん」の道具も使わずに。
刑務所のような作業。実体の無い声の主が「お茶にしませんか?」と誘う。
そんな時代を私たちは生きた。昭和の日本を味わえる、謎の深い作品。
2:34:43 岡和田晃さん 【リモート】
「来訪者、湖畔の周りをそぞろ歩き・・・」
独特な回想的な世界展開。オンラインでシュトルムやラミュの名が挙げられ
形而上詩が朗読される、コトバスラムジャパンって凄い。
新型コロナ陽性から回復された岡和田さんの書下ろし。
また聴き入ってしまい、司会者が終わりのタイミングを逃す。すみません、、
2:39:20 Haruka Tunnelさん 【現地】
トンネルに入る前の注意書きが、ガソリンスタンドの
門型洗車機に入るときの注意事項を想起させる
「空洞の中の空洞」「何もないところの中に空洞がある」
「ここにははじめから何もないし、誰もいない」
私たちはそんな法則に囲まれた世界に生きる。
宇宙の音階のようだ。「ぼくの質量は木漏れ日と同じになる。」グレイト!!
■決勝戦 二巡目
2:44:12 Haruka Tunnelさん 【現地】
「長い長い手紙を綴った…」
「嫌がらせのつもりはないんだけれど、便箋で指を切って血がついてしまった…」
Haruka Tunnelさんの完成された独白の世界は、会話体。
「手紙」、「誕生日」、「刃物」、「珈琲」といった詩句の実質感。
聴き手の心に伝えることを前提に響かせている。
2:49:08 岡和田晃さん 【リモート】
プロレタリア詩。寿都、幌延町、泊村の問題について
核のゴミ捨て場とタバコのポイ捨てについて。
江原光太の「ぼくの演説」が出てきてとても嬉しく。
あのガリ版刷りの衝撃的な冊子。国葬の問題にも。
「あんたが死んだ後のツケを負わせんな!」
魂の叫びに世界は静まる。
2:54:16 あさとよしやさん 【リモート】
擬人化された「名付け難き感情」と
彼岸に立つ大好きだった「ばあちゃん」と「おれ」。
「永遠の混沌」について。
「ああそうだ おれは何度もお前に強制停止させられてきた
その都度、戦慄した、その不可思議で底知れぬコンテキストに戦慄した・・・」
「名付け難い感情」表現しがたい表情との対決、ラストも圧巻。
2:58:45 ゐLL AuguSTさん 【現地】
「頭の中で割れ続ける電球、致死量に近いリビドーを検出。
まるで隕石が振る注ぐここはシェイカー!」
言葉を自在に書き(掻き)回す魔術師
「現代は映像の砂漠、ボキャブラリーに乾く」
スイッチが入ったらすぐに言語藝術を編み出すモードに
接続される。「種の進化には欠かせないはぐれ者」
即興性の高い、「狂気と正気の共演」セッション。
■審査の結果 コトバスラムジャパン2022、北海道大会。
優勝はHaruka Tunnelさんでした。おめでとうございます!!優勝者のご挨拶の中で、Haruka Tunnelさんは「私の内面にある言葉の一部を、伝わったというか、しっくりきた部分があったのかな、と思い…」と謙虚に語っておられました。「伝える」という一番基本的でありながら忘れられがちなポイントを意識していたことが分かります。同時に、伝えらえる受け側に想像の余地を与え、行間を感じさせる豊かな詩法が、Harukaさんの体験を伝えるだけではなく、読者に体験させる世界を提供していた、その点が優れており、特徴的であったと感じました。
■柴田望ご挨拶
皆様、本日は誠にありがとうございました。第2回目の北海道大会、初めての現地開催を、俊カフェさんで開催させて戴き、忘れられない大会となりました。本当にありがとうございます。
私は先日の抽選でも申し上げました通り、北海道、旭川で75年以上続く詩の活動、「青芽」~「フラジャイル」というものを行っております。事務局長を拝命致しました「北海道詩人協会」、それから小樽詩話会も、60年近く続いております。ちょうど5年くらい前、2017年くらいから、旭川、札幌、小樽、北見…、道内各地で詩のイベントに関わらせて戴いております。北海道には「北ノ朗唱」など、古くから詩や朗読の文化があります。昨年は旭川で歴史市民劇に出演致しましたが、小熊秀雄が北海道旭川で活躍したのは、100年近く前になります。小熊秀雄の親友だった鈴木政輝や加藤愛夫、更科源蔵らが北海道詩人協会を立ち上げましたが、この方たちは、高村光太郎、萩原朔太郎や生田春月、室生犀星とも親しかった、深い交流があった詩人です。こうした歴史の流れを汲むような団体で活動しております。
北海道の詩の歴史の中で、古川善盛さんという、非常に重要な詩人がおられます。古川奈央さんのお父様です。本当に今読んでも新しくて、温かい、ユーモアもあって、人や社会との関りに、独自の視点を与える、皆さんにご紹介したい素晴しい詩人です。先達について学ばさせて戴きながら、私の活動としては、普段はもっと年配の詩人の方との関りが多いのですが、今日はコトバスラムジャパンという、現代の日本で最先端の詩の大会です。私は、何だか間違って、タイムマシンで未来へ来てしまったような感覚です。でも私のこれまでの取り組みは、この、コトバスラムジャパン北海道大会、今日この日に、たどりつくためにあったのではないかな、と今は、感じています。そして、時代を超えて、コトバが人の心を震わせる、ということは変らないんだな、そのことを再確認できました。この俊カフェさんという素晴らしい会場で、その想いに浸ることができて本当に幸せです。ここで皆様のコトバに心を震わせた、歴史に残る一日、今日を一生忘れません。本当にありがとうございました。
*
ここまで書いて、2022年12月31日23時が過ぎました。
「主催」としてはお恥ずかしいほどの仕事しかできず、三木悠莉さんたちにご迷惑ばかりおかけしながら皆様に大変な御助力を賜り、たどたどしい司会者として、関わらせて戴いた次第でございます。この8月14日奇蹟の一日に柴田が目撃した詩祭、素晴らしい才能溢れる詩人たちのパフォーマンスについて、全員が詩人であり、それぞれの言葉の表現において、感動と驚きを与えてくださった天才だと思っています。本当に大切なことを学ばせて戴きました。
もっと早くご報告申し上げたかったのですが、拙い感想にて大変恐縮ながら、何とかぎりぎり年内アップできます。忘れられない一瞬一瞬の言葉の閃きを、永遠の詩想を、本当にありがとうございました。
今年一年、詩の交流を戴いたすべての皆様へ心より感謝申し上げます。
2022年12月31日
柴田望