詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■季刊「詩的現代」36号(第二次March2021 詩的現代の会) 金井裕美子「天井桟敷の人々を見た夜に」 愛敬浩一「詩に表れた性愛とは?」

■季刊「詩的現代」36号(第二次March2021 詩的現代の会)を拝読させて戴きました。
・「愛し合う者同士にはパリも狭い」の台詞で有名な、ジャック・プレヴェール脚本、マルセル・カルネ監督による名作『天井桟敷の人々』は第二次世界的戦中に3年3ヶ月かけて撮られ、パリ解放後の1945年に公開された。
 金井裕美子さんの詩篇天井桟敷の人々を見た夜に」、映画の場面が想起される。
 「警官(男)は云う「ご自由に」
  ガランス(女)はこたえる
  「よかった 私は自由が好き」」
・数えられることへの怖れ、感染予防のために制限や規制を守らなければ、けしからん、「自由」であったはならないという風潮に飼いならされている今の時代に、終戦の夜明けに公開された映画の「自由」の台詞は淡い。
 「かぞえるものもなくなり
  噛み終えて
  人々が去った後のさみしい自由
  食卓は
  いちだんと暗い」(金井裕美子「天井桟敷の人々を見た夜に」)
・本号の特集は「詩に表れた性愛」。愛敬浩一氏の論「詩に表れた性愛とは?」で、鈴木志郎康の『新生都市』、『罐製同棲又は陥穽への逃走』、『見えない隣人』が論じられているのを嬉しく拝見。「不断に生活そのものを観念化し、虚構化してくるのである。現代風俗を一瞥すれば、どれほどのことばが、イメージが、あるいはイメージ化したものが、具体性としての生活それ自体を虚構化しているかは即座に了解しうるはずである。」という上野昂志の鈴木志郎康論が引用されている。マンションのエレベーターのプラスチックのボタンが何者かによって焼かれている。「私の見えない隣人の会話の仕方なのだ」…「具体的な」隣人を想像することに感じられる言葉の〈性愛〉、「他人と触れ合うことの怖れと歓び」「即物的な哀しみ」、いずれも詩の創作における根源的で、未だに未知のあらゆる可能性を秘めた深い領域と心得ます。

f:id:loureeds:20210511064638j:plain

■5月8日(土)、旭川まちなかぶんか小屋にて、【映画部会初の冊子(CINEMA COLLECTIVE)、販売記念イベント】

■5月8日(土)、まちなかぶんか小屋にて、【映画部会初の冊子、販売記念イベント】…光岡慎二氏によるまちなかぶんか小屋「映画部会」活動の基調報告、滝本幸大さん、竹田郁さん、岡本成史さんによる各作品のトレーラーを紹介しながらの上映の振り返りトーク、非常に勉強になりました。DVD化されていない作品の紹介も多かったのですが、早速家で観れそうな作品をネットフリックス等で探っております(「FAKE」はありました)。
 大作娯楽映画とは違った「ミニシアター」の必要性、自分と自分の社会・世界との関りの表現、「映画そのものが思考のための大きな意味でのテキスト」(大島渚)であるドキュメンタリーに特化し、ただ単に上映をするだけではなく、チラシやパンフレットも配給会社に頼らず、作品を観て自分たちが感じたこと、作品の理解を自分たちの言葉で書いていく、上映の活動が大きい意味での表現となっている。ここが映画部会さんの取り組みの素晴らしいところと感動致しました。
 現実を鋭く照射する強度のある作品が多く、、、2017年に「青年★趙(チャオ)」のポスターだけを見て(内容を把握せずに)旭川のある市会議員が「けしからん!!」という声を上げたこと、「わたしの自由について~SEALDs2015~」上映の折には「中立的な立場にはないと他に誤解を与えるため」市教委の後援が不承認となったことなど、表現の自由について深く考えさせられるお話もあり、その誤解を解くためにも上映が行われるべきと強く感じました。日頃からプロパガンダを意図している証拠として、いつの時代も権力は文化や報道の操作を試みます。表現の自由について非常に考えさせられる貴重な機会を戴きました。ありがとうございます。
 まちなかぶんか小屋映画部会、シネマ塾の活動のドキュメンタリー映画が撮られるべきと考えます。多くの方に応援されますことと、御活動の永続とさらなる御発展を心より祈念申し上げます。
・冊子(CINEMA COLLECTIVE)は800円にて、
こども富貴堂さん、まちなかぶんか小屋さんでも買えるようです。ぜひ多くの方に読まれるべき一冊です。

f:id:loureeds:20210509004619j:plain

■「海岸線(樺太)」  柴田望

「海岸線(樺太)」  柴田望
*
  一本の鉛筆が、一個の消ゴムの意味を持ち、魂の落書を消す。
 人間が消えたのだ。
 そのあとに何が残るか、はじめて、ノートの意味が開かれたのだ。
  ~文梨政幸「開く」『核詩集 1980年刊』(核の会)
*
 土地によって生息する樹や言葉 
 水の巡りは異なる
 樹は奇蹟だ
 最古の有機の命が受け継がれている
 人体に何十憶年もの情報が棲む
 悟らせてはならない
 たった一人が神である可能性を
 危険な血筋かもしれない
 無限大の偶数の生の痕跡
 未来へデルタ状に広がる
 風が種を飛ばす 海を超えて故郷を視る
 どんな樹が生えていたか
 「まるで樹の切株だらけで、墓地の中へ
 レールを敷いたようなものです。」(林芙美子樺太への旅」)
 そんなはずはない 
 トドマツはモミ エゾマツはタウヒ
 針葉の水の巡りに結晶が降る
 どんな家に住んでいたか
 豊原市東一条裏通り 食酢屋の裏の長屋
 最初の記憶 近所の葬式 よちよち歩きの弟が
 トッタン鋲を飲みこんだ
 母は慌てて弟を縦に抱き病院へ
 本人はけろっとしていた
 恵須取の役所を辞め 父は雑品屋へ転身
 リヤカーで町じゅう歩く だんだん暮らしは楽になり
 西六条南二丁目 古物商看板をあげた
 ある冬の朝、真っ黒い浮浪者が店にいた
 母は怯えていた 男はモゴモゴ言っていた
 「何か食わせてください」 飯場から逃げてきた
 母はおそるおそるどんぶりに汁をかけて差しだす
 父は怒った 土間ではなく、家に上げなさい
 父は男に五円を渡した 男は何度も頭を下げて出て行った
 子ども心に恐ろしかった 父は言った
 「勉強しなければ、あの男のようになる」
 豊原尋常第三小学校 入学前に算術は九九まで覚えた
 円の描けない図画だけが乙 他はぜんぶ甲
 体操の時間は誰にも負けなかった
 運動会はリレーの選手 一〇メートル先の相手も抜いた
 運動会の寿司やお弁当が美味しかった
 父もその日だけはにこにこしていた
 樺太庁吏員の娘、担任のH先生が結婚で辞めた
 後任はS先生 靴音だけで起立! 教室はシーンとなる
 たとえ前日欠席しても宿題をやってこなければ
 鬼のように怒鳴られる 成績は見違えるように向上!
 …S先生は終戦のとき、女性をかばってロシア兵に殺された
 豊原中学を受けるために、毎日補習
 合格者は四人に一人 苦手な理科は全部できた
 国語は分からない漢字が一つだけ
 算術は最後の五分でひらめいた
 発表の日、O先生が雪まみれになって家に転がりこみ
 「合格しましたよ!」 今でも強烈に憶いだせる
 八百人中三位合格 C組の級長になった
 小学校も優等卒業 陸上競技で全島二位
 この年の七月七日、北支盧溝橋の銃弾一発で
 昭和二〇年八月十五日迄の長い戦争に突入した
 柔道はいつも投げられていたが面白くて
 放課後残って練習に励む
 中二で一級になり、中三の秋に初段を戴き
 師範学校で三段 軍隊で四段へ昇段
 夢の中でも試合に出た
 夢で覚えた技で勝った
 陸上競技、スキー、国防競技の本校選手
 東京まで四泊五日の車中泊
 二年目は全国代表四位
 國立競技場で皇太子の臨席を仰ぎ決勝に出た
 ユニフォームの左腕に白熊のマーク
 その上に「カラフト」と縫い取りがあった
 幼稚園くらいの子が「樺太って白熊がいるの?」と聞く
 すると姉らしい女学生が走り寄って
 「ぼうや、その人たちとお話しても言葉が通じないのよ
 アイヌ人なんだから」
 おかしさと認識のなさに腹が立つ
 土のう運搬リレー二位、手榴弾投擲突撃競技三位
 旭川師団長鯉登行一中将より賞状を戴いた
 勉強部屋に飾った 学籍簿 通知箋…
 樺太には家も 母校も 何一つ残っていない
 私の歴史は残っていない これが引揚者の想い
 中学卒業の三カ月前、父が心臓病で倒れた
 進学すべきか、家業に従事すべきか
 父は樺太古物組合の長 三〇人を雇っていた
 父に無断で印鑑を持ち出し
 満州の哈爾濱医大奉天工科大、仙台高等工業、
 三つとも無試験推薦で合格した
 学校から報告…父は驚いたが、すべて断った
 樺太師範へ入学する手続きを依頼した
 私の青春の夢は潰れてしまった
 父が嫌になった 家を離れたい
 十七歳の二度と来ない時代に 私はこの考えを持った

f:id:loureeds:20210509004403j:plain

 



■第3回「朗読会 +in 未来日記」春・2021 4月17日 恵庭のアートスタジオ・未来日記(Cafe&Dining Bar Linお隣)

■4月17日に恵庭のアートスタジオ・未来日記(Cafe&Dining Bar Linお隣)にて、
会場に特製パーテーションの設営や、マスク、消毒、少人数制限など、徹底したコロナ対策のもと・・・
第3回「朗読会 +in 未来日記」春・2021が開催されました。
尊敬する詩人の皆様、村田譲さん、森れいさん、嘉藤さんにようやく再会でき、
久しぶりに朗読を拝聴できた喜び! また、上森ゆう子さんのエッセイと工藤ひろ子さんの東直子作品(小説)朗読は家族をテーマにした内容、
さらに工藤ひろ子さんによるオカリナ演奏(「北の国から」)といった、長い非常の織り込まれた今の日常とは異なる空間が顕れ、
会場の各所に飾られているマスターの朱田年秀氏による墨書も個性的でとても魅かれました。
村田譲さんのブログに書かれております通り、詩人の皆様の朗読の動画はYouTubeにアップさせて戴いており、
こちらのURLとなります。安全第一にて、会場使用で集客ではなくこのようにオンライン配信をメインで
イベントを行っていくという可能性も今後拓けていくように感じております。
(4月7日に御逝去された富田正一さんの「老いて美しく」(詩集『老春のプロムナード』より)を
追悼の意を込めて柴田は朗読致しましたが、その朗読はまたの機会に公開させて戴きます。)
*
第3回「朗読会 +in 未来日記」春・2021
アートスタジオ・未来日記 2021.4.17
【詩・朗読】嘉藤師輔子「星の林に月の舟」他in未来日記・恵庭 2021年4月17日
【詩・朗読】森れい「今 伝えたい詩」in未来日記・恵庭 2021年4月17日
【詩・朗読】柴田望「楯 ー功績」(詩誌「指名手配」創刊号)in未来日記・恵庭2021年4月17日
【詩・朗読】柴田望「壁-川村兼一さんへ」in未来日記・恵庭 2021年4月17日
【詩・朗読】村田譲「海霧(ガス)にゆれる影」in未来日記・恵庭 2021年4月17日
★村田譲さんのブログ「空への軌跡」・吟遊記・ で紹介されています!!

 

f:id:loureeds:20210509004051j:plain

f:id:loureeds:20210509004106j:plain

f:id:loureeds:20210509004118j:plain

f:id:loureeds:20210509004143j:plain

f:id:loureeds:20210509004132j:plain

f:id:loureeds:20210509004159j:plain

f:id:loureeds:20210509004210j:plain

f:id:loureeds:20210509004223j:plain

■5月22日(土)より足利市のartspace&cafeで開催予定の「吉増剛造展VOIX」!!

吉増剛造先生より戴きました。5月22日(土)より足利市のartspace&cafeで開催予定の「吉増剛造展VOIX」の美しく、視る者に深い印象を与えるパンフレット。「さらに深い地点へ」「海の深淵に溶け込んだ無数の記憶や想いに対して、私たちも手を伸ばし得る道を開くかもしれない。」…篠原誠司氏(足利市立美術館)の紹介文、「Reborn-Art Festival」や「葉書Cine」についても触れられています。6月5日(土)には(コロナ禍のため)定員予約制でのライブパフォーマンスも行われるとのこと。こちらに共有させて戴きます。

f:id:loureeds:20210509003520j:plain

f:id:loureeds:20210509003536j:plain




■2021年5月8日(土)発行の「苫小牧民報」(苫小牧民報社)に!! 「命の尊さ 気付かされる ~星まゆみさん 詩集『ひだまり』を自費出版~」

■2021年5月8日(土)発行の「苫小牧民報」(苫小牧民報社)に!!
「命の尊さ 気付かされる ~星まゆみさん 詩集『ひだまり』を自費出版~」
 笑顔(素敵!!)の星まゆみさんご本人と詩集のお写真が大きく掲載されています。
「両親と過ごした思い出の一こまを懐かしむ詩や、父の命の灯が消えゆく時間に立ち合った際の心の動きを描写した詩など、命の尊さに改めて気付かされる35篇が収録されている。」
 星まゆみさんが大切に編まれた詩集、本当におめでとうございます。詩集『ひだまり』(フラジャイル)、多くの方からの反響を戴いております。心より感謝申し上げます。

f:id:loureeds:20210509003357j:plain

■旭川文学資料館 企画展「木野工「旭川今昔ばなし」直筆原稿展~絵・版画・写真と共に~」

■2021年5月4日(火)発行の「あさひかわ新聞」に、5月11日(火)より開催される企画展「木野工「旭川今昔ばなし」直筆原稿展~絵・版画・写真と共に~」が紹介されています。木野工(1920~2008)著 「旭川今昔ばなし」の直筆原稿など、とても楽しみに勉強させて戴きたく存じます。大変注目されており、菱谷良一氏による記念講演は既に定員とのこと。さすが文学の街旭川、コロナ禍にあっても文化を大切にする市民の心へ、発信地の旭川文学資料館は
(郵便番号)070-0044
(電話番号)0166-22-3310
(fax番号)0166-22-3334
開館日等
(開館日)火曜日から土曜日
(休館日)日曜日、月曜日、祝祭日、年末年始
(開館時間)午前10時から午後4時まで
(入館料)無料f:id:loureeds:20210509003039j:plainf:id:loureeds:20210509003052j:plain

f:id:loureeds:20210509003150j:plain