詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩人、界π歩(さかいごっほ)さんより、詩集3冊と、大量の詩作品のコピーを戴きました。誠に、ありがとうございます。
 本日、健康診断の帰りに中央郵便局でぎっしりつまったレターパックを拝受。界さんの世界にどっぷり浸かっております。界さんは現代の言葉で、それを自分の言葉にして、現代について書いている。新たな言語を編んでいる。そのように感じました。

 詩集『unari ききうなり』(1999年 旭図書刊行センター)
 詩集『岳樺別冊 界π歩詩集』(1992年 岳樺編集部) 
 詩集『綴、管』(1991年 土曜美術社)
 
 コピー 詩作品
 ・2017年
 「mudai」「うららかな春の日」「日を浴びて」
 ・2016年
 「接続法のよる」「風光異聞」「
 ・2015年
 「無題感無量」「一ツニシテ幾ツ、幾ツニシテ一ツ 主ヨ」
 「あけがたのときをまつていた」
 ・2014年
 「音楽と共にあるひととき、この見透し難き世に―
  (一人の演奏家の想い出と共に)
 ・2013年
 「某日」「秋の日、発寒川」「うた供養」
 ・2009年
 「イツ シカト」
 ・2007年
 「そして ぼくらはいま、どうしているのか……」
 
 一見硬質、じつはユーモアたっぷり。現代の書き方でいて、古典にも通じている、様々な表現方法に挑戦しているけれど、奇をてらっていない。界π歩さんだけの言語空間は器が広く、日本語(時には外国語も)の端から端まで許容している。
 ・・・じっくり浸らせて戴きます。
 
 先日、5月25日(土)に札幌市豊平館にて、全道規模、道外からも御参加を戴いた朗読会《第2回 ぽえむ・ライヴin豊平館》、無事執り行いましたが、その前日に界π歩さんは柴田にお電話を下さり、北海道新聞でこの朗読会をお知りになったのでぜひ参加したいと仰ってくださり、朗読をしてくださいました。本や雑誌でお名前を拝見していた界π歩さんご本人とお話でき、なんと朗読まで・・・。その後、お電話やお手紙でお付き合いを戴き、「色んな表現やこだわりがあっていいと思う」「朗読会、新鮮な刺激だった」との有難いお言葉。誠に、ありがとうございます。

☆界π歩さん 「(イキナリ ドット マッサカサマニ……」「とはいえ(ここへ来て」(5月25日 豊平館
朗読の動画はこちら↓

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界π歩さん作品集!

 

■《第2回 ぽえむ・ライヴin豊平館》 ありがとうございました!!^v^!! 2019‐05‐25.

■五月二十五日(土)、《第2回 ぽえむ・ライヴin豊平館》を行い、おかげ様にて無事盛会に終わりました。ご参加ご出演、運営へのご理解ご協力を賜り、皆様へ心より御礼申し上げます。歴史ある豊平館1階「下の広間」にて、二十三名の詩人が朗読。会場満員の盛会となりました。

 昨年よりスタートしたこの会の目的としては、チラシには「詩に肉声をとりもどし、「言霊」の再生を!」とありますが、「皆さんと楽しく 詩の会をやりたい!」という瀬戸正昭さん(詩誌『饗宴』主宰)の熱き希望。その原動力であるお気持ちから、知らぬまに迅速に制作されたチラシのご出演者名が未確認のまま掲載ということがあり、ご迷惑をお掛けしてしまった事態となりました。実行委員を代表し、この場を借りて深くお詫びを申し上げます。状況に気づいた時点から、瀬戸主宰お一人の負担ではならないと、メンバー間の打ち合わせを密に、運営全体を見直し、準備も含めた綿密なプログラムや事前案内文の作成等、昨年の反省も挽回すべく、皆様にお喜び戴ける会の実現を目指しました。入念に打ち合わせ、音楽伴奏その他各演出等も大いに盛り上がり、純粋な詩の言葉と笑顔溢れる稀有な会となりました。動画の配信やDVDも制作販売。映像編集作業により、後日再度、皆様の詩世界に浸ることが叶いました。

 普段はなかなかお会いできない様々な詩誌、団体の皆様との垣根を超えた交流。道内のみならず、横浜から細野豊さん(元日本詩人クラブ会長)、静岡から高橋絹代さん(詩誌『くれっしぇんど』編集発行者)にもご参加を戴きました。また、希望される方はどなたでも歓迎。新聞で会を知った方の飛び入り朗読参加も有り、貴重な出会いに恵まれました。

 会場には今年終刊を迎えた詩誌『游人』全号の表紙のボードを記念に飾り、番場早苗さんに贈らせて戴きました。ホワイトボードには「桜」にちなんだ連詩を会場の皆様のペンで創作。皆様とご一緒に会を創ることができましたことを、何よりも嬉しく、心より感謝申し上げます。

(柴田望・『フラジャイル』代表)

石井眞弓さん 「薄化粧」

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嘉藤師穂子さん 「狐森の記」

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金石稔さん 「恋歌Kのために」

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木暮純さん 「朝焼けから飛び立つ鳥のように」

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佐藤裕子さん 「風の家」

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柴田望  「游」

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清水俊司さん 「スピノザの瞳」他2編

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菅原みえ子さん 「オオカミ」

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瀬戸正昭さん 「幾寅にて」

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高橋絹代さん 「逃げ水」「手」

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長屋のり子さん 「いろりを焚いて」「山桜」「夕方」

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番場早苗さん 「游人へ」「前は海」

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福士文浩さん 「夜の翼」

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冬木美智子さん 「飛燕草」

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細野豊さん 「真夏の夜に尾根を行く灯の列」

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松岡真弓さん 「石狩川

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三村美代子さん 「ほたる」

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森れいさん 「錺屋 ―かえしうた―」

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やまだ乃理子さん「飲み屋の会話」

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界π歩さん 「(イキナリ ドット マッサカサマニ……」「と
はいえ(ここへ来て」

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星まゆみさん 「三日月」

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堀きよ美さん 「パダム、パダム」

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渡辺宗子さん 「胡桃」

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ぽえむ・ライヴin豊平館

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ぽえむ・ライヴin豊平館

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ぽえむ・ライヴin豊平館


 

■詩人・山川精『哈爾濱難民物語』 詩誌「時刻表」第五号 嵩文彦さんの個人誌「麓ROKU」No.8

■詩誌「時刻表」第五号(2019年5月20日 「時刻表」舎)を拝受し、田中健太郎さんの「削り取られた残りの日々―難民詩人・山川精さんに」を拝読致しました。

「敗戦後何年にも及んだ
 中国での難民生活の記憶を
 たった二冊の詩集にまとめられた詩人のお仕事は
 まさに削ることの繰り返しでした」

 (田中健太郎さんの「削り取られた残りの日々―難民詩人・山川精さんに」より)

 ハルピン市での難民生活を書いた詩集『哈爾濱難民物語』で第二十回北海道新聞文学賞を受賞した詩人・山川精氏との心温かな交流がえがかれた、とても印象的な作品。
 不勉強な私は山川精氏のことを知らず、北海道にこんな凄い詩人が居たのか、と感動しておりましたところ、嵩文彦さんの個人誌「麓ROKU」No.8(2019‐5)を拝受し、こちらには田中健太郎さんによる「難民詩人 山川精さんについての備忘録」が収録されており、さらに詳しく、詩人について学ばせて戴きました。16歳で開拓民として家族として中国東北部(偽満)に移住。敗戦で難民となり、1946年引き揚げ。道内の各図書館等で司書をされ、栗山町図書館館長。詩人として二冊の詩集を上梓。嵩文彦さんが道新の縮刷版を丹念にお調べになられたところ、昨2018年1月28日に享年90歳で亡くなられていたとのこと。
 
 「『哈爾濱難民物語』は山川さん本人である一八歳の「少年」の目を通して、難民生活の日々を、徹底したリアリズムによる散文詩の形式で綴られた物語である。」
 「言葉を尽くしても決して語りつくすことのできない体験を、削って、削って、一つ一つの散文詩としてまとめられたことにより、通常の戦争記録を超えて、繰り返し読まれるべき「物語」に昇華している。」(田中健太郎さん「難民詩人 山川精さんについての備忘録」「麓ROKU」No.8 2019‐5)。

 そこで、とても読みたくなってしまいまして、インターネット等で『哈爾濱難民物語』を探しても見つからなかったのですが…木暮純(学芸員・沓澤章俊)さんにお願いし、探して戴いたところ、なんと、旭川文学資料館所蔵、貸出可能とのこと。誠にありがとうございます。とても貴重な一冊で、詩人の署名入り。館長で詩人の東延江さんからの寄贈でした。東さんにご挨拶をさせて戴き、お話を伺ったところ…東さんは、昨年1月の北海道新聞の御悔やみ覧を、切り取って手帳に収めておられました。知っている方のは、こうやって取っているのよと、今日、見せて下さいました。ああ、この詩集ね、と「朋友徳才」や「媽々死了」の魅力など、何度も読まれたと仰って、山川氏のことを語ってくださいました。置戸や北海道大学など、図書館の司書を長年されて、道立文書(もんじょ)館の創設にも参画された、《図書館の神様》と呼ばれた方とのこと。少年時代の親友徳才のことや、「子どもを売るような悪い事をするのは中国人ではなく、日本人だった。親が子どもを紐で体に結んでも、寝ている間に解かれて、どこかへ売られてしまう…」、難民生活について、山川氏から聴かれたお話を、東さんは語ってくださいました。

 今日一日、『哈爾濱難民物語』をじっくり読ませて戴きました。散文詩15作、70ページほどの詩集ですが、一作一作がとても深く、存在の根底に届くまで言葉が削られているよう。ご本人のあとがき、堀越義三氏の「添え書き」も熱く、重厚かつ貴重な読書体験となりました。栞「ひまわりと眠る」(サッポロ堂書店)には、小笠原克氏(「《唖》の叫ぶ声」)や江原洸太氏(『哈爾濱難民物語』)の寄稿もありました。田中健太郎さんによって今回の「麓ROKU」に紹介された山川精氏による次の言葉が胸に突き刺さりました。

 「国の責任は、のちのちの歴史の中で問われ続けるだろう。『官の歴史』がふさごうとする穴を、『民の歴史』は決してそれをゆるさない。これほど豊かで平和な国はないが、ひと皮むけば修羅地獄の世界だ」(山川精・北海道新聞「朝の食卓」「祖国二つありて」)

 小説家・安部公房満州からの引き揚げ者。「無名詩集」「終りし道の標べに」「けものたちは故郷をめざす 」 等にその壮絶な体験が書き残されています。東鷹栖安部公房の会の活動で、さらにその当時の研究を深め、山川精氏のこの詩集の紹介を、ぜひさせて戴きたいと考えております。

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山川精 哈爾濱難民物語

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時刻表 第五号

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麓ROKU

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山川精氏 ご署名

 

■神戸の詩誌「ア・テンポ」vol55(2019-5)

■神戸の詩誌「ア・テンポ」vol55(2019-5)をご恵送賜りました。北の地より、厚く感謝申し上げます。

 山本真弓さんの「祈りの道〈遠い人〉〈出津教会〉」、織り重ねるつらい日々からも学びを得られることへの感謝や、大江健三郎の「信仰を持たぬ者の祈り」の祈りについて、先日、柴田三吉さんからお話を戴いたことを憶いだしつつ、拝読。
 〈出津教会〉では、遠藤周作の『沈黙』について触れられている。 


 *『沈黙』の中の神父ロドリコは迫害に耐えられず転んだ。
  村人キチジローも何度も転んだ。
踏絵をためらった信徒は海の杭に繋がれ果てたという
脆弱な心の私には到底耐えられない拷問の数々

 ロドリコが転ばぬ限り、見せしめの穴吊りの拷問は続く。イエスが語った。「踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生まれ、お前たちの痛さを分つため十字架を背負ったのだ。」…ロドリコは一度空っぽになり、傲慢を捨て、仕える人に自分を変えた。だから、真のクリスチャンになり得た。信仰の獲得の物語として捉えました。
 一昨年、映画化された機会に小説『沈黙』を再読。映像の長崎の殉教の海は美しく凄惨。少し前の時代、じつは現在も、平和の皮を一枚剥がすと惨劇が潜む。

 「強くあることが文明を維持していく唯一の手段ではありません。弾き出され、否定された人々を個人として知ろうとすることが大切なのです」
 「今、最も危険に晒されているのは若い世代の人々です。勝者が歴史を勝ち取り、世界を制覇するところしか見ていない。世界のカラクリがそのようなものだと思い込んでしまうのは、とても危険なことです。物質的な現代においてこそ、何かを信じたいという人間の心を真剣に考えることが大切なのだと思います。今、西洋ではそういった想いを小馬鹿にするような風潮がありますが、かつて宗教的基盤を作り上げていった前提が、今変革を遂げているのではないかと思います」
 映画監督マーティン・スコセッシ氏のインタビュー
https://gqjapan.jp/…/…/martin-scorsese-comes-to-japan/page/2

 詩論、牧田榮子さんの「詩を読む 倉橋健一 詩「あの葡萄の実は」より」、丸田礼子さんの「人間を読む 私の石牟礼 道子ノート」も、単なる作品論、作家論ではなく文明論としても、大変興味深く拝読させて戴きました。誠にありがとうございます。

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ア・テンポ

R.I.P. Dr. John, New Orleans Music Icon Dead at 77 | Music News | Consequence of Sound

ドクター・ジョンが!! 今月6月6日、77歳で亡くなったとのこと。
衝撃を受けております。ドクター・ジョンのいないニューオーリンズは暗い。
マイク・ブルームフィールド、ジョン・ハモンドとの「三頭政治」、CD持ってました。
大学の頃、デヴィッド・サンボーンの番組で観た"Iko Iko"、「ガンボ」のバージョンのイントロも、ピアノでよく真似していました。東川で弾いたなあ…
プロフェッサー・ロングヘアの素晴らしさ、ドクター・ジョンのおかげで知りました。
映画「ブルースブラザーズ2000」サントラの"Season of The Witch"、渋かった。

映画「The Last Waltz」の"Such a Night"、

  こんな夜
  悩ましい月明りの夜…

最高に甘く優しい。ユーモアも。ご冥福をお祈り致します。

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Such A Night

Such a night, it’s such a night. 
Sweet confusion under the moonlight.
Such a night, it’s such a night.
To steal away the time is right.
Your eyes caught mine, at a glance.
You let me know that this was my chance.
But you came here with my my best friend Jim,
And here I am, tryin’ to steal you away from him.

Oh... but
If I don’t do it, you know somebody else will
If I don’t do it, you know somebody else will
If I don’t do it, you know somebody else will
If I don’t do it, you know somebody else will

Such a night, it’s such a night.
Such a night, it’s such a night.

Oh... but
If I don’t do it, you know somebody else will
If I don’t do it, you know somebody else will
If I don’t do it, you know somebody else will
If I don’t do it, you know somebody else will
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R.I.P. Dr. John, New Orleans Music Icon Dead at 77 | Music News | Consequence of Sound

 

■詩誌「極光」No.30(2018年12月)

■詩誌「極光」No.30(2018年12月)を御恵送戴きました。感謝申し上げます。
 鷺谷みどりさんの「石膏の彼女」、凄い作品。安部公房の変形譚のよう。有機物から無機物へ、「とうとう前進を脱ぎ終えた/姉のおそろしい/幸福について考えた。」幸福とは何か、存在とは何か、「伸びていく電柱の影と 私と/自分の区別」とは何か。ある日突然、非日常が日常に…変形したのは私なのか姉なのか。詩でこんなことができるのか!
 中筋智絵さんの「七夕」、蝋燭もらい(7月7日もしくは月遅れの8月7日の七夕に北海道で行われる行事)について書かれている。この風習は訪問販売営業の原点ではないかと思われる。子どもながら、断られないかどきどきします。今もまだあるのでしょうか。ほとんどの家はお菓子をくれますが、たまに本当に蝋燭が出てくることもあります。芯を問う、最終行が忘れられない、脳裏に残ります。会社で最近皆に言っています。
 5月25日(土)の「第2回ぽえむ・ライヴin豊平館」にて、トップバッターで朗読をされた石井眞弓さんの「グッド・イブニング」。鍋はみずうみ、鍋の中は戦場であり、具材は戦士。食事とは壮絶な戦いがあったことの証を戴く儀礼であり、燭台があの世とこの世を照らすのか。正装で敬意を示すのか。5月25日、石井眞弓さんの朗読の前後にピアノ演奏をさせて戴きました。石井さんのお洒落なイメージで、コンテンポラリージャズ風でした。
 笹原実穂子さんの「ペル」、「クローンで生き返らせたのよ/一千万円なの」クローン犬は韓国ではすでにビジネスとして成立しているのですね。死んだ犬の複製の依頼は世界各国から来ているという。酪農大学のホームページで読みました。「GLOBE+」の記事では、動画もあります。死んだペットが10万ドルでよみがえる(文字どおり) クローン犬誕生の現場に立ち会った【動画あり】https://globe.asahi.com/article/11651419「もとの犬と同じように動く」と喜ばれるという。 aiboの修理じゃないのですが… 「クローンで永劫に生きなくても/いいよね ペル」
 興味深い御作品ばかりで御紹介しきれません。誠にありがとうございます。

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極光

 

小樽詩話会会報 No.623 2019年6月号

小樽詩話会会報 No.623 2019年6月号
昨年11月の旭川詩人クラブで展示した作品を冒頭に掲載戴きました。誠に、恐縮です。
 「ちいちゃん」という女の子が、お父さんの仕事(警察官)の都合で転勤、4人家族が道内引っ越しを繰り返す。前半は地名をアイヌ語の意味で書いています。
*

 主たる川=〈士別〉
 向こうの島=〈奥尻
 頭が浜についている所=〈江差
 山奥に入っていく川へ=〈苫小牧〉
 合川=〈興津〉
 向こう地=〈春採〉
 通路、喉または薬=〈釧路〉
 月日の出る…秋の…波立つ川=〈旭川

 昭和のちいちゃんの家族は日産サニーやトヨタカムリで、車で移動します。アイヌの人たちは川を船で移動しました。天気の良い日に車に乗っていると、遠くのアスファルトが光って濡れているように見えます。雨で濡れているのではなく、太陽の光が反射している、と運転席のお父さんが教えます。「そのとき、何かが語ってくれた」夢か幻想か、人智を超えた現象、遠い昔に亡くなられた方が時を超えて語る、世界が水と光でできていると思えるような、不思議なお告げが訪れます。アイヌの人たちが船で移動していた時代の道路は川であり、水であり、水は光っていました。雨上がり、四人家族の車が虹のアーチをくぐる。家族の平和な日常の同時体験。幸せな一家団欒のときの表情は、現代の日本の家庭にも、アイヌの人たちの家族にも、当然あったのだろうということを書く試みでした。

******

「 顔 」

主たる川から向こうの島へ
向こうの島から頭が浜についている所へ

お父さんの仕事の都合で
鉄道で
または車で

頭が浜についている所から
山奥に入っていく川へ

駅のホームに弟の友達が
大勢詰めかけたり
さっきまで夏だったのに
トンネルをくぐったら
突然、雪景色になったりして

合川から向こう地へ
通路、喉または薬から
月日の出る…秋の…波立つ川へ

日産サニーかトヨタカムリで
助手席にちいちゃんはいて
後部座席にお母さんと弟がいて
遠くの道が濡れて見えた
「雨が降っているのかな?」
「違うよ、太陽の光が反射しているのだよ…」

そのとき、何かが語ってくれた
どんな言葉か憶えていないけれど
子どもにもわかりやすい不思議な言葉で
仕組みを語ってくれた
(世界が水と光でできていると思った)

次の町で雨が降ってきた
あの道の光は消えてしまった

その次の町で雨はやんだ
虹のアーチをちいちゃんとお父さんはくぐった

弟とお母さんもくぐった
そのときの
四人の
*

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小樽詩話会

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小樽詩話会

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小樽詩話会