■本日発行の「グラフ旭川」2019年2月号、文芸(53ページ)に柴田の散文風な詩作品「花粉」を、全文掲載戴いております。
また、「フラジャイル」4号、「青芽反射鏡」vol.4のことも、掲載戴いております。《活発な表現活動を展開するフラジャイル党》とのご紹介…恐縮です。誠に、ありがとうございます☆
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花粉 柴田望
九〇歳のおじさんと八〇歳のおばさん
のために毎朝五時起きで除雪した 重い
雪をうちの敷地へ汗だくになって運ぶ
細かいところはおばさんが丁寧に除雪し
た 九〇歳のおじさんの具合が相当悪く
なり施設へ入った 家は僕の紹介する不
動産屋に任せてくれた なかなか売れず
に困っても (お兄ちゃんが除雪を頑張
ってくれたから…) おじさんは他を頼
まなかった ようやく話がついたとき
おじさんは亡くなっていた 解体業者が
やってきて おじさんとおばさんが何十
年も暮らした家は三、四日で跡形もなく
消えた 庭も木もどこにもない 空白の
角の更地 半年もしないうちに 背の高
い雑草だらけになってしまった 雑草の
種はご近所に飛ぶ 除雪の日々を思い出
し 草を刈ろうと踏みこんだ 見たこと
もない何種類もの花の周りを 蜂や蝶や
もっと小さな虫たちが舞う 町内のオア
シス おじさんとおばさんはよく近所の
子どもたちをあの家で遊ばせてくれた
冬の間は自転車を物置に入れてくれた
草を刈ることも枯らすこともしてはなら
ないと思い 背を向けたとたん 九〇坪
の雑草の茂みにひそんでいた雀の群れが
一清掃射のごとく空へ飛びだしていっ
た いつの間に吸いこまれたのか あん
なにたくさん 星空に飛びだしていった