詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■『細野豊詩集 新・日本現代詩文庫145』(土曜美術社出版販売)

お盆休みとは全く関係の無い時間帯で忙しく生きていたのですが、気温的に夏の終わりを感じていた今日、郵便受けをふと見ると、封筒が…なんと細野豊先生の詩集『細野豊詩集 新・日本現代詩文庫145』(土曜美術社出版販売)!! ご恵送賜り、心より感謝申し上げます。
 一昨年、詩誌「饗宴」の詩会(札幌すみれホテル)でお会いし、ペドロ・シモセやホセ・ワタナベを翻訳された高名な細野先生にお会いできた感激、粋な朗読にも感動し、柴田が安部公房の会に入っていると知ると「第四間氷期が好きだ!」と叫んでくださり…今年の札幌豊平館でのライヴにも御参加を戴き、自作詩「真夏の夜に尾根を行く灯の列」や翻訳詩の朗読、我々世代に励ましのお言葉を戴き、そんな細野先生にどこか南米的なカーニバルの明るさを感じつつ、感謝の限りであります。
 下川敬明さんの解説「飛翔し続ける情熱の矢」を貪るように拝読、細野先生の訳業を「至高なるものに向かい一直線に飛ぶ詩精神。比類なく熱い情熱の矢」と評されている。詩人がどのような国に生きて、どのように巡る気候風土のもと、どのような文化、言語、社会情勢の渦中で独自の感性を獲得したか、詩の「本質的要請」に応える仕事…。今回、この詩集を読むにあたり、2017年10月に発行された詩誌『饗宴』80号に掲載の特集「異風土との対話・細野豊の現在~対談 細野豊の出自をめぐって」を読み返しつつ、やはり詩作は、すべての仕事もそうかもしれませんが、生とは何か、ほんとうの私たちは誰かという核を探る壮大な旅路なのだ、その芯へ解き放たれる矢なのだと、確信致しておりました。
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捨てても捨てても
言葉はあとからあとから
ざわざわと生まれ
蛍の乱舞で
ぼくの周囲を蒼白にする
幹がひびわれてもなお
言葉をしげらせ
他者の方へと
ぼくを傾ける
おまえはだれ
 
『細野豊詩集 新・日本現代詩文庫145』(土曜美術社出版販売)「荒地のなかの雑木のように」より

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