楯 柴田望
右と左が争う…
右と左の争いを頂点が利用している
三角形が日常のあらゆるレベルで拡散し
さらに大きな地図に飲まれる
右と左の抗争が上部団体に利益をもたらす
左右死角と頂角は協力依存関係にある
先端を包みこむほどの情報の闇に
収まっている限り目立たないが
バランスは乱れる 外域を侵す
内なる自己と争う…
頂点からまっすぐ反対側に
左右どちらからも利益を得ないもう一つの角を想定する
急速に多角形化して円に近づく
角は偉大で底辺(=フラジャイル)を養う
潰される自覚はなく 中庸を幻視している
棺の数だけ核は生まれる
平面を乗り越え 球体の飛沫で判断を傍受し
記憶の塗装流す 温暖化で広がる海の起源は
ヒトを含むすべての獣の諍いである
二〇一七年十一月二十八日
当時高校二年の吉田圭佑さんの詩「O Contradictio」が
新聞の二面にわたり掲載された
(タイトルはラテン語で「矛盾」を表す)
現代の日本でパウンドやネルーダのような長い詩が
新聞をぎっしり満たすのを初めて見た!
「風に吹かれて」が小さく載っただけだ
政治や株やウィルス感染を報じるための痛みに
争いで利益を生じる対角線上を次元化し
その日、百万人の読者を戦慄させた
若き吉田圭佑さんによる絶え間なき越境を
忘れられた世代の詩人たちが励ます
「楯突け、楯突け!」と
*
2020-02-11.