詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩とエッセイ「焔」第118号(2020年4月25日発行 編集発行:福田正夫詩の会)

■詩とエッセイ「焔」第118号(2020年4月25日発行 編集発行:福田正夫詩の会)を御恵送戴きました。誠に、ありがとうございます。
 資料「旧『焔』同人座談会記録―井上靖先生を囲んで―」(昭和六〇年一月二十四日午後 於 教育出版センターサロン、レトリカ)が43ページにわたって収められており、感激しつつ拝読させて戴きました。この歴史的な座談会は錚々たる方たち(井上靖、小沢彰、おの・ちゅうこう、蒲生直英、戸張みち子、中山智方、林鼎、矢島信明、山本和夫石垣りん、上野菊江、渡辺和一郎、金子秀夫、福田美鈴、北村信吾)が参加され、皆様の御作品や吉田一穂のこと、ホイットマンについて等も語られており、井上靖氏が福田正夫氏の詩の運動のことを「福田さんのなさった仕事は実を結んだと思います。それでなかったら、ぼくは詩を書いていませんね。」など、かなり詳しく語っている。感動です。井上靖伝記的小説三部作の『夏草冬濤』で中学時代の友人藤尾により詩に目覚めた。「焔」に関係されたのは九州大学時代のようなので、つまり小説『北の海』の後の世界がご本人により語られている。トラウベルの訳詩集のことや、なんと「冬の日」の朗読も! 大切に永久保存させて戴きます。歴史ある文学誌の素晴らしい取り組み、地域の文学の歴史を大切にされるご姿勢を見習わなければならないと感じております。
 詩作品、「いま 医学は病を突き止めることには/すばらしく発達したが/すべてを完治させることには/まだ途上のようだ」というまさに現在の世界にとって重要な問題が語られている瀬戸口宣司氏の「ミクロの決死圏のように」…今でしたらマーベル映画の「アントマン」でしょうか。
 八木真央氏の「フォトジェニック」、安室奈美恵の曲名にあります。写真映えする。今ならスマホで手軽に撮って「インスタ映え」などと若者は言っておりますが、写真は光学。白黒で撮って引き延ばして焼いた、薬品の酸っぱい匂いを思い出しながら拝読、「レンズって私そのものじゃないか」暗室での哲学的な作業。
 渡ひろこさんの「手」に注目、空港が閉鎖され、人同士の接触が社会的に禁じられている今こそ読まれたい。人は誕生のとき自分以外の人の手によってこの世に取り出され、この世を去る時も自分以外の多くの人の手によって送られるのだ。
 金子秀夫氏の〈詩集紹介〉、昨年発行された詩集の中で特に注目していた野口やよいさんの『天を吸って』、谷口ちかえさんの『木の遍歴』の評が丁寧に書かれており、とても勉強になりました。本当に貴重な勉強の機会を賜り、心より厚く御礼申し上げます。

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