詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■「追悼・渡辺宗子さんの聲」(日本詩人クラブ『詩界通信』94号 2021年4月)

日本詩人クラブ『詩界通信』94号が届きました。
渡辺宗子さんについて書かせて戴きました、
拙稿をこちらに転載させて戴きます。
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  追悼・渡辺宗子さんの聲 
                   柴田望
  「抵抗と批評の精神を詩想に最期まで書けることを祈っています。」功労顕彰への「謝辞」として「詩界通信」92号に掲載された渡辺宗子さんの御言葉。昨年6月のサッポロ・アートラボ〔サラ〕主催の鼎談「文学における普遍性と特殊性」の中でも、渡辺宗子さんは「書くときには、権力に対して挑戦していくことだ」と発言されています。このイベントを収録した詩誌「フラジャイル」10号の巻頭に、渡辺宗子さんの詩篇「雪だるまの地平線」を掲載。出来上がった詩誌は12月20日に発送致しました。21日には届いたはず…12月22日、御家族に看取られ御逝去されたと伺い、胸の張り裂ける深い空白にて、いまだ立ち直れずにおります。
 詩人・渡辺宗子さんは昭和9年4月21日福岡県生まれ。昭和55年に詩集『ああ蠣がいっぱい』で北海道詩人協会賞を受賞。永井浩氏によって「求心的な追求をもって人間の背後からその不条理性をのぞこうとしている」と激賞されました。個人誌「弦」は平成4年創刊*、最後の79号が令和3年1月に嵩文彦さん、長屋のり子さんの手によって皆様に届けられました。詩誌の活動の使命は、有名な方の寄稿を戴くことや、詩のグループ間の争いなどではなく、真の創作の場を拓くことであるとお教えくださいました。文学のイベントでいつもお会いし、「あなた、仕事があるんでしょう、こんなことばかりして…」と心配して叱ってくださったこと、宗子さんの朗読の後ろでピアノを弾いたこと、前述の6月も隣の御席で「ほら、あなたも発言しなさい!」と背を押してくださったこと、宗子さんの御聲を忘れません。「地霊の抵抗」と感謝をいつも胸に。
(『詩界通信』94号 2021年4月 日本詩人クラブ
*「個人誌「弦」は昭和43年創刊、6号までを発行。その後平成4年より再び1号から継続され、…」と初出『詩界通信』稿には書いており、資料調査時の記録等から、当初そのように認識していたのですが、北海道文学館で実物を見たところ、昭和43年創刊の「弦」は、本田錦一郎氏らによる小説・戯曲・詩などの総合文芸同人誌でありました。2019年3月30日、高橋秀明さんが講演された「北海道横超忌Ⅱ」の後、倉敷コーヒーで渡辺宗子さんがその「弦」のお話をされていましたこと、今更ながら憶いだしました(そのときもお隣の席でした)。誠に申し訳ございません。この場を借りて訂正させて戴きます。
YouTubeにて朗読の動画をご覧戴けます。
詩劇「洪水伝説(稽古篇)」+ポエーマンズ 渡辺宗子さん 札幌20190831
渡辺宗子さん「胡桃」《第2回 ぽえむ・ライヴin豊平館》20190525
渡辺宗子さん「椿哀悼 」「第1回 ぽえむ・ライヴin豊平館」20180428

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