詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■5月20日(日)13:00~16:30 かでる2・7 1010会議室にて
「北海道詩人協会」総会が行われましたので、初めて出席させて戴きました。道中、道庁の八重桜が綺麗でした。開会の言葉、ごあいさつ、第1~4号議案、収支決算報告、新旧役員ごあいさつ…会員数132名、事務局は膨大なお仕事、本当に大変な状況でありますこと、三村さんが代読された新会長によるメッセージの中から、今後魅力ある協会づくりのために、真摯に問題点を明確にされ、改善に取り組みたいと考えておられることなど、伝わりました。

■第55回「北海道詩人協会賞」は鷲谷みどりさん『標本づくり』(土曜美術出版販売)が受賞。評価して戴いた方にも、足りないところを指摘して応援してくださった方たちにも感謝とのコメント。ご本人による透き通る朗読、卓越な喩の織り重ねが響く御作品「標本づくり」「フラミンゴ」が会場に染みていき、時間が止まりました。

あるはずのない私の体の底の井戸の
くらい水のたてる音からは
ついに起き上がることのできないまま
水辺の鳥たちは
夜明けを前に
自分の体の
上手な折り目を探している

■「詩人祭2018」では、自作詩朗読(第1部)石井眞弓(札幌)さん、柴田望(旭川)、熊谷郁子さん(札幌)、齋藤たえさん(滝川)、若宮明彦さん(札幌)、熊谷ユリヤさん(札幌)、入谷寿一さん(苫小牧)。若宮先生の「石の気持ちはよくわかった」という「瑪瑙少年」、熊谷ユリヤさんの、長女次女三女によるラインのやりとりでお父さんに捧げる会話詩、入谷寿一さんの息子さんとの国会見学でのユーモラスなトイレの詩、とても印象に残りました。

■1分間スピーチでは、前事務局長の坂本孝一さんのご挨拶と、初めてお邪魔するので柴田も挨拶。道新の日曜文芸で若宮先生に貴重なご指導をたくさん戴いたことや、しばらく一人で書いていたのですが、ある日東延江さんのお話を聴きに、旭川詩人クラブへ行ったとき、富田正一さんに出会いましたこと。「青芽」入会の経緯など、お話させて戴きました。(「フラジャイル」のこと、お話させて戴きました。m(._.)m)

■自作詩朗読(第2部)、三村美代子さん(室蘭)、東峰和子さん(千歳)、橋本征子さん(小樽)、石田和男さん(札幌)、笹原実穂子さん(石狩)、菅原みえ子さん(岩見沢)、渡辺宗子さん(札幌)、原子修さん(小樽)。石田和男さんの「ジャズ」の詩(脳梗塞のことをお話になられた後に)、橋本征子さんの「指先につまっていた闇」「つま先に集積する」自在に変化する「砂」、菅原みえ子さんの半世紀前の女子工員、女子事務員の会話詩、渡辺宗子さんがご友人福島瑞穂さんのお話をされた御作品、社会の闇を撃つ、前号の『弦』に掲載されていた「素通りできない」のフレーズが印象的、硬質な詩的空作品に会場に緊張の糸が張られた瞬間が印象的でした。原子さんは高らかに空へ昇る白鳥の詩を暗唱されて、詩人祭は盛大に終了致しました。

■柴田が朗読させて戴いた「手紙」テキストは下記の通り。司会の三村さんより「富田さんはたいへん高齢と思っていましたがこんな若い同人の方がおられるのですね。」「懐かしい名前がたくさんでてきました。」「旭川の皆さんによろしくね」とのお声掛けを戴きました。例によってi-phoneでBGMを流しつつ。(マッコイ・タイナーコルトレーンを追悼した「Naima」にて)

「 手紙 」

「力強い赤さを持った星が西方へ流れました。あれは貴方なのでしょうか」(内村秀)
「決して再び語ることのなくなった貴方の前で私に許される言葉は本当はない」(渋谷美代子)
「人間の生命とは、いったい何であろうか。未来のある一人の若い生命をうばった孤独な自我は、僕達に何を問うというのだろう」(文梨政幸)
「〈季節〉〈変な話〉〈友情〉〈追憶〉・・・彼の年齢に不相応な苦悩があり、疲れがある。ニヒリズムでありデカダンである」(早川浩
「彼の作品の中に多くある〈航海〉その中に私はまざまざと彼の悲しみを見る」(竹内和雄)
「人生への希望と詩作への自信、そしてその言葉の影にあった懐疑と不安」(山田政明)
「一体、山田君の死を傍観していたのは誰だ」(中村道夫)
「太宰は彼にとっては信仰に近いようなものだった」(佐藤武
「君の詩型は素直で一つの純粋な格詞を持っていた」(小山政明)
「君は夏草のしげみの中に身を横たえてどんな夢を見ていたのだろうか」(金田元彦)
「私はまだ君が死んだなんて、信じられない」(富田正一)

これが戦後七十二年の歴史を持つ『青芽』の力
同人たちが詩友の死を悼む追悼号(昭和三十四年十一月)
国学院大学で平安文学を専攻していた詩人山田稔さんは
昭和三十四年八月十九日、東京都多摩川上流太宰治の碑前にて命を絶った
彼はまだ二〇歳だった

「僕は何としても書かねばならぬ。それは自己の生命を一日一日滅してゆくものであったとしても、書くことに自己の一生を賭けてしまったから」
「今日こそは、今日こそはと思う。はかない期待をよせてまた毎日を僕のうちからうばいとるのだ。新たな世界への歩みをつづけるのだ。何がどうとはもとよりわかっていること。すべての知人に手紙をかいて僕の非礼をわびよう」(山田稔

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