■最新の『現代詩手帖』10月号に北海道立文学館の「吉田一穂展」の広告が入っており、その中に恐れ多くも吉田一穂の顔写真と一緒に私たちの名前を入れて戴いており(フラジャイルからは木暮純と柴田です。)、11月4日の朗読会「一穂への遙かなる最弱音(ピアニッシモ)」のご案内が掲載されております。できるのだろうか・・・。吉田一穂作品と、吉田一穂作品にちなんだ自分の作品を読むという課題を戴きました。ピアノ演奏と、動画制作の宿題も、あります。できるのだろうか。試練を賜り、誠にありがとうございます。がんばります。自作詩は2ケ月かけて、かなり校正しております。
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「 粉 」
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屋外広告の過大な紙片は舞う
窓ごしリングで殴りあい 観客も黄昏
勝ったほうのぶんかに染められていく
オカシイだろう
地球のほうが回っているだなんて
法律で許されないはずだ
あんなに見事に空中に織りこまれて
一本の電柱に百本以上ものケーブル
頻繁に短い音符のクラクション鳴らす
信号待ちの表面張力 コップの底に沈む
巣にたかる蜂のごとく バイクが満たす
六車線もの日本車の隙間を
( 街
白金の幾何学
高層建築の光の祝祭
あゝ鮮麗な空間の形 )
ソフトクリームの液化より速く検索
バンコクのデパートの書店に詩のコーナーは無い
多重に絡む遺伝子の副音声で国境は無いのに
レンブラントホテルのプールで水着なのは白人と日本人だけ
鱗粉を禁則に孕み
ふりがなのごとく針金(ナイフ)緩ませ
アルファベットのお土産を売る現地の若者を背に
仲間たちはフキダシくり抜かれて
夜の街へ溶けていった
( 不眠の華に晝く屋根裏の月 )
( 有機解體の頽廃期へ分裂し下降していく )
※()内は吉田一穂の作品「都市素描」(詩集『海の聖母』)より