詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■11月9日(金)の北海道新聞旭川》にて、私たち旭川詩人クラブの記事が掲載されており、22日まで旭川文学資料館にて行われている詩画展について、ご案内を戴いております。
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■今回の展示会の関連イベントとして、同会場にて11月6日(火)には旭川詩人クラブの集い。午前中は地下の交流室にて『詩めーる旭川第16集』の出版記念会。司会は荻野久子さん。全員が順番に自作詩朗読、作品への意見や感想などで盛り上がり…とくに高野みや子さんの「ふわり」について、議論されました。あいまいな記憶をたたんでひっくり返して、伸びきった小枝のように、一羽の鶴が折られる。一篇の詩のように。隅々しっかり折らなければ鶴は折れないのに、「ふわり」というタイトルが素敵。きっちりやった過去の仕事の思い出もふわり浮かぶのか。
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■お弁当を戴き、午後からは詩画展会場へ。メインイベント「詩と遊ぼう」、まずは今回の展示作品について、実作者が語る。3分間のタイマー設置。作品の前で。時間があればそれぞれ朗読していました。
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「 顔 」

主たる川から向こうの島へ
向こうの島から頭が浜についている所へ

お父さんの仕事の都合で
鉄道で
または車で

頭が浜についている所から
山奥に入っていく川へ

駅のホームに弟の友達が
大勢詰めかけたり
さっきまで夏だったのに
トンネルをくぐったら
突然、雪景色になったりして

合川から向う地へ
通路、喉または薬から
月日の出る…秋の…波立つ川へ

日産サニーかトヨタカムリで
助手席にちいちゃんはいて
後部座席にお母さんと弟がいて
遠くの道が濡れて見えた
「雨が降っているのかな?」
「違うよ、太陽の光が反射しているのだよ…」

そのとき、何かが語ってくれた
どんな言葉か憶えていないけれど
子どもにもわかりやすい不思議な言葉で
仕組みを語ってくれた
(世界が水と光でできていると思った)

次の町で雨が降ってきた
あの道の光は消えてしまった

その次の町で雨はやんだ
虹のアーチをちいちゃんとお父さんはくぐった

弟とお母さんもくぐった
そのときの
四人の
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■自作について語る?のはかなり抵抗がありますが…
先輩方のご説明を興味深く拝聴し参考にさせて戴きつつ、
どう説明したらいいか考え、簡単な説明を行い…「顔」という作品について、
「ちいちゃん」という小さな女の子が、お父さんの仕事(警察官)の都合で転勤、引っ越しを繰り返しています。4人家族です。前半は地名をアイヌ語の意味で書いています。
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主たる川=士別
向こうの島=奥尻
頭が浜についている所=江差
山奥に入っていく川へ=苫小牧
合川=興津
向う地=春採
通路、喉または薬=釧路
月日の出る…秋の…波立つ川=旭川
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■昭和のちいちゃんの家は日産サニーやトヨタカムリで、車で移動します。アイヌの人たちは川を船で移動しました。
天気の良い日に車に乗っていると、遠くのアスファルトが光って濡れているように見えることがあります。
それは、雨で濡れているのではなく、太陽の光が反射している、と運転席のお父さんが語ってくれます。
「そのとき、何かが語ってくれた」
ちいちゃんの夢か幻想の中で、何か人智を超えたもの、遠い昔に亡くなった人でしょうか。時を超えて語ってくれます。
世界が水と光でできていると思えるような、不思議なお告げが訪れます。
アイヌの人たちが船で移動していたときの道路は川であり、
水であり、水は光っていました。
雨のやんだ町で、四人家族の乗った車が虹のアーチをくぐる。
運転席のお父さんと助手席のちいちゃん、後部座席のお母さんと弟もくぐります。
何気ない家族の平和な日常の同時体験、その思い出。幸せな一家団欒の表情、その時の顔は、現代の日本の家庭にも、アイヌの人たちの家族にも、当然あったのだろうということを書こうとした試みでした。
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■会の最後は、即興詩を創って発表するコーナーでした。
季節柄、「みぞれ」「霙」、または「野菊」を題材に…
柴田は、このように纏めさせて戴きました。何卒御笑覧賜りましたら幸いです。
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(みぞれ) 

自然の(みぞれ)は晴れたら乾く
人のつくった(みぞれ)はいつまでも執念深く
春でも夏でも凍ってゆく
国と国の間を寒さで覆うのも
人のつくった(みぞれ)である
そうかと思えば何かの拍子に
一瞬にして蒸発してしまう…こともある
人のつくった(みぞれ)はこうして
跡形もなく忘れられていく
おめでとう!
忘れるって偉大だ
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■すみません、、30分制限、10行程度と定められた即興詩、この程度でした(笑)。
会員以外にも御参席された方々を含め21名が作品提出。コピーの詩集を配布後に、おいしいお茶とお菓子を戴きながら、作品朗読。フラジャイルから山内さん、冬木さんも参加。フラジャイル同人で旭川詩人クラブの佐々木さん、荻野さん、木暮さんも。富田さんをはじめ東さんたちの熟練の詩技も披露され、大変、勉強になりました。一年に一度の行事、忘れがたい一日となりました。心よりお礼申し上げます。
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2018-11-12.

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