詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■『青芽反射鏡』No.7

『青芽反射鏡』№7落掌深謝。ささやかな御礼を含めて読後感の短評を書きました。十六人もの詩人が作品を寄稿。エッセイや詩評など、六十四ページの充実した一冊(裏表紙にはイメージソングも「明日に向かって(2)」も掲載♪)。荻野久子さんの新詩集『記憶の風』の評を、二宮清隆さんが見事な視点で(永遠の少女の眼)で時代を告発しながらも自然と同化し風景を美しく歌い上げる」と書いている。「日常茶飯事こそ不可解な詩的世界ではないのか」「日常という不安定なおぼろの中を、限りある命として生きている」。

 詩作品やエッセイ群も、「詩の着想と構築はこのような気づきから展開されるのだよ」とお教えくださっているよう。反射とは光の波動。各同人による選び抜かれた詩語が独自の余韻を放つ。星清彦さんの「幸福論」は「幸福」の時代による変化について、葵生川玲さんの「江陵」は滝川市立江陵中学校と韓国の江陵(カンヌン)市について、宮沢一さん「父のように、母のように」はご両親を書きながらご自身と向き合う深い考察、志々見久美子さんの「温暖化」は「太陽」の恵みと宇宙自然への畏怖。

最新技術で航空写真のごとく高みから見下ろす視点(世界視線)と、日常の倫理の中で肉眼で人や物事と触れ合う生の視点(普遍視線)が多重層に折り重なった言語空間が詩であり、どちらが書けても物足りないものになってしまうのかもしれませんが、皆様の御作品を拝読し、とくに後者(普遍視線)が着想以前から各詩人の根幹で長い時間をかけて育まれ、それが前者(世界視線)の表現に気づかぬうちに活かされ、読者に届き、深いところでの信頼・共感を得ることができるのかもしれないと感じております。貴重な勉強をさせて戴きました。

富田正一さんと荻野久子さんの御作品も、身近な主題から生命の根幹について、主題を明確に言語が絞られ、密度の高い行を醸成。詩人の着目する世界に与えられた言語の意味が表情深く多様に彩られる。

 P54「一筆啓上」に紹介されている通り、『グラフ旭川』10月号には、富田正一さんによる小説「プラタナス慕情」が掲載されており、このストーリーの鍵となる歌曲の楽譜も掲載されている(作曲:吉川明夫さん)。ジャンルを超えたご活躍。№8は来年3月発行予定とのこと、楽しみに致しております。

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青芽反射鏡No.7