詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■「小樽詩話会会報」No627号 (2020年2月号) 「こんどやろう」 柴田望

■「小樽詩話会会報」No627号 (2020年2月号)
 
*
「こんどやろう」 柴田望
 
  一日じゅうの話し言葉を紙に書いて読みなさい
  さんせいを白 はんたいを赤く塗って 
  いかに赤が多いかを悟る
  願うままに刈られた羊毛さえ
  公に認められず
  黒いコートでも着よう 
  管理団体に任す
  蛇が尻尾を噛む 皮が立体に脱ける
  一つ一つの作業に捧げるコップ 
  セミナールームに均一に並ぶ
  直径の距離を後ずさり 
  注がれる配慮と訓告
  優先順位を練る 
  (こんどやろう)

  すると後頭部を両足で叩くものがある
  いつもおにぎりやパンを分けてやるカラスだ
  ごめん、今日は何もない
  縄張りギリギリまで低く飛び
  ペットのごとくねだる
  黒いコートと小さな分身とカラス
  学校の駐車場の入り口で別れる
  こちらを何度も振り返り
  小さな分身がバイバイする 
  他の父母が微笑む

  物をねだるとき「こんどは嫌だ」とそいつは泣く
  ひとは残酷である 右と左を戦わせ 
  頂点を売る 無数の三角 多次元体
  登校の時間に職場は開いておらず
  二階の職員玄関前で三〇分読書 
  価値観の変わる速さでカラスは飛ぶ 
  事務員の必読である、江原光太、金石範、
  大西巨人トーマス・マンを読む

  空から見下ろす本社視線と 
  横からの現場視線 
  柔軟性が求められる 凄惨な歴史
  なりすましネットにばら撒く!
  バランスを持った感覚がないと行き過ぎてしまう!
  街は疵跡 保護色の砂漠
  抜き打ちの検査を拍手され
  見えている位置を色分けし
  校庭の樹々に群れは集う
  朝日が巣窟を照らす

f:id:loureeds:20200203073106j:plain

f:id:loureeds:20200203073123j:plain