詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩誌「錨地」No.72(2019年11月)

■詩誌「錨地」No.72(2019年11月)を拝受致しました。誠にありがとうございます。
 
 前号の「錨地」No.71は斉藤征義さんの特集でした。そのとき感想をブログに書かせて戴きましたが、今回のNo.72に柴田の拙文を掲載戴いております。恐縮の限りです。大学の頃、面識の無い斉藤征義さんに詩誌「タイムポテンシャル」を送らせて戴き、励ましの御葉書を戴いたり、それから20年後、「フラジャイル」にも御葉書を戴いて、2018年5月の江別での朗読会で初めてお会いでき、御挨拶を申し上げましたこと、「永訣の朝」の朗読を拝聴し、全身が震えた憶い出、書かせて戴いております。

 詩作品、遠藤整さんの「林檎を買う」。選ばれる運気を上げるには林檎を食べましょう、林檎とは選ばれる果実であると、占い師が言っていたのをテレビで観たことがあります。「暮れかけた市場」「足を縛られた家鴨」「水牛の肉に群がる蝿を追う男」…一体ここはどこなのか? 「この言葉がわかるか」「猫が鳴いている 異国の声で」…どうやら外国のよう。私たちは「あなたに似た多くのあなた」の中の一人。知らない街角で迷う。(40ページ「同人近況」を拝読し、えっ、ハノイですか!と納得。)

 斉藤芳枝さんの連作「小さき者へ」「マジカルサンセット」「ペル アモーレ(愛のために)」、潜在記憶や魂の宇宙とのつながり、輪廻する生命の樹の一部であることを気づかせてくれる。「やり直すことよりも/新たな旅立ちを えらんだ/前を見つめる眼差しに/一瞬の若さが よぎる」(「マジカルサンセット」)。毎日、毎分毎秒、何に注目するかの膨大な選択が織り重ねられ、長い時間をかけて魔法の夕暮れ空模様を編む。様々な出会いへ導く。「めぐりあった魂のふれあい/世界の人々のため息と鼓動が脈打ち/君のために/神秘的な愛の空間が広がる」(「ペル アモーレ(愛のために)」)。

 入谷寿一さんの「鴎の天使」「キムンカムイ」、エカシの伝説。自然の猛威に立ち向かう霊力を、神を感知する力を、現代人がいかに失っているかを思い知らされました。今起きている問題に対しても、もっと過去の聲に耳を澄ませなければならない。疎かにしてはならない。

 根保孝栄さんの「詩聖・鮎川信夫吉本隆明の姿~伝説の昭森ビルは戦後詩発祥の地」、神田神保町にあった「昭森ビル」の伝説。その時代の空気が伝わる貴重な記録。ペンネームの御由来とともに、大変興味深く勉強させて戴きました。

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