詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩誌「時刻表」第六号(「時刻表」舎・2019年11月20日)

■詩誌「時刻表」第六号(「時刻表」舎・2019年11月20日)を山本眞弓さんより御恵送戴きました。誠に、ありがとうございます!!

 この詩誌のうち唯一「」付きの題名である田中健太郎さんの「闘うには弱すぎる」はコールドワークで成形されたガラス作品、闘うにはあまりに弱そうな儚そうな…兵士の造形のイメージ喚起される作品。「* 2019年8月25日 富山市ガラス美術館で見た、富山ガラス造形研究所造形科二年生キルン・コールドクラス合同展「Naked」でみた小山愛由の同名作品から着想を得た。」とある。「愛玩動物のように/名づけられ/愛に満たされて/育てられてきた子どもたち」とは一体どのような兵士か? インターネットで検索しても作品の写真はアップされていない(富山市ガラス美術館のHPでこの合同展のポスターは発見http://toyama-glass-art-museum.jp/exhibition/exhibition-3024/ 、 富山ガラス造形研究所のHPのWEBギャラリーhttps://toyamaglass.ac.jp/gallery/ は、卒業生の作品しか掲載されていない!)ので、見ることができない分、さらに想像力が喚起される。「小さなカラダに/リアルな銃/それが何なのか/どう扱ったらよいのか/戸惑っている」。私たちは訓練されていない。明日戦場に立っても役には立たない。強い武器を持つには弱すぎる。いや、弱いから武器を持つのか。

 山本眞弓さんの御作品「蝉」は夏のベランダを舞台に生と死の壮絶なドラマが繰り広げられる。「生を全うしようと/最期に挑む」。「体長六センチ」の「地中で育った不撓の魂」。幼虫として地下生活する期間は3~17年、幼虫の時に死んだり、羽化の時に襲われたりせず、成虫になれても2週間~1カ月の命。その短い時間の中で何を決意するのか。どんな役目を果たすのか。最期には飛翔できるのか。「彼は六脚に力を込め立ち上がった/少し右に傾ぎながらも/最後の飛翔を願っている/生きよ生きよと蝉の大合唱は鳴り止まない/前を見据えて/後ろの萎えた脚をかばいながら/ニ・三歩歩き出し/次の風を待っている」「その一瞬を待っている」。

f:id:loureeds:20200329225112j:plain