詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■「詩と思想」(土曜美術社出版販売)8月号、河野俊一さんの詩集評に、柴田望『顔』(ムゲンブックス)をとりあげて戴いております。

■「詩と思想」(土曜美術社出版販売)8月号、河野俊一さんの詩集評に、柴田望『顔』(ムゲンブックス)をとりあげて戴いております。じつは1、2月号で下川敬明さんにもとりあげて戴きましたのに、同じ2020年中に2回も…なんという幸せ。心より感謝申し上げます。
 「その迫力がまた読み手に伝わるのでしょう。」「私はむしろ、スピード感を抑えて人間を描いた「アイスクリーム」のような作品に強くひかれます。」という好意的な評を賜り、拙詩集『顔』に収録の「アイスクリーム」を紹介戴いております。キャリアコンサルタントセミナーとクレームについて、注文したはずのものとは違う料理が出てくる運命への感謝や、若い頃の出会いと別れの記憶について、2年前の小樽詩話会会報に掲載して戴いたものです。
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「アイスクリーム」
レストランで注文したのと違う料理が出てきたら
怒る? 怒らない?
怒らないに手を挙げたのはたった一人・・・
だってうちのバイトも間違えることあります
お客さんに怒鳴られて一生懸命謝ります
よく話を聞いてみると誰も悪くない
神の悪戯みたいなときもあります
そういうお客さんに限って 執拗な苦情 
録音したり 法律の専門家の見識を交え
誠心誠意ご対応させて戴きます
若い頃、ホテルの和食レストランで
誰に遣わされたのか デザートに蜂の屍骸
奥から料理長がやってきて 
美しい死を眺めた
頼んでもいないアイスクリームを二つ出してくれて
共犯の笑みを浮かべる お会計はぜんぶ無料
それから二人は一緒になり
色んな注文が重なって いつしか重荷となり
頼んだ相手ではなかったと
気づくまで共に過ごした
注文した料理と違うものが
絶対に出てこないレストランなら
あの後も何度か二人で蜂を探した
短くて美しい日々は味わえない

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