詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

『北海道詩集』No.67 2020年版(北海道詩人協会 2020.10.2.)

■『北海道詩集』No.67 2020年版(北海道詩人協会)
67年の歴史を持つ『北海道詩集』が今年も無事発行されました。困難で不透明な時代にあっても、こうして手にすることができ、皆様のご作品に触れることのできる幸せ。12月の会報も楽しみに致しております。坂本孝一さん、村田譲会長による「詩集展望」、嘉藤師穂子さんによる「詩誌展望」興味深く、田中聖海さんはじめ編集を御担当された皆様のご尽力、心より感謝申し上げます。
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柴田望
「 楯  ―吉田圭佑さんへ 」
 
右と左の争いを頂点が利用している 三角形
が日常のあらゆるレベルで拡散し さらに大
きな地図に飲まれる 右と左の抗争が上部団
体に利益をもたらす 左右死角と頂角は協力
依存関係にある 先端を包みこむほどの情報
の闇に 収まっている限り目立たないが バ
ランスは溶ける 内なる自己と争う…
 
頂点からまっすぐ反対側に 左右どちらから
も利益を得ないもう一つの角を想定する 急
速に多角化して円に近づく 角は偉大で底辺
を蔑む 馴らされる自覚はなく 棺の数だけ
核は生まれる 平面を乗り越え 球の飛沫で
示唆を傍受し 記憶の塗装欺す 温暖化で広
がる海の起源はヒトを含むすべての獣の諍い
である
 
二〇一七年十一月二十八日 当時高校二年の
吉田圭佑さんの詩「O Contradictio」が新聞※
の二面にわたり掲載された タイトルはラテ
ン語で「矛盾」を表す 現代の日本でパウン
ドやネルーダのような長い詩が新聞をぎっし
り満たすのを初めて見た! 株や政治や不倫
騒ぎやウイルス感染の傷みに 争いで利益を
生じる対角線上に次元化し その日、百万人
の読者を戦慄させた 若き吉田圭佑さんによ
る絶え間なき越境を 忘れられた世代の詩人
たちが励ます 「楯突け、楯突け!」と
 
※第五十五回 有島青少年文芸
 最優秀賞 吉田圭佑 旭川東高二年(当時)
 詩「O Contradictio(オー・コントラディクティオ)」
 北海道新聞朝刊(二〇一七年十一月二十八日付)22~23面

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