「 感謝 」 柴田望
壁
と襞
売と買
冷と温度
混沌の始原
繰り返し導く
最後の一行へと
骨壷から取りだし
草原を走る骨の展示
迫間で言った言わない
元首ではなく儀礼的機能
被支配は感情を飼い慣らす
報告をしたとき目を見て話を
聞いてくれてマスクをはずした
その一瞬の息を呑むほどの美しさ
神聖不可侵である長い象形の途上で
見慣れた朝夜の映しを見たこともない
聴いている見えない人たち海が話す楔形
手指からこぼれ落ちた子どもの書紀常世へ
こぶし大の波動永年弾き続けたフレージング
形がないかもしれない途方もない韻律の奥底へ
長年死のうとして描かれた点の悲しみは報じられ
大事な雫はゆっくり明瞭に語られなければならない
目を閉じても容易く大陸を手に入れられる規則を巡り
迷路の出口を見抜くさだめ耳と目をふさいで偽り続ける
法律によるヘイトクライム自覚のなさが狩猟の証明である
自覚した獲物であったとしても明滅する塵と何かが外にいた
という自覚はない醒めることなど求められてはおらず陸へ導く
空の向こうのあなたへ呼びかける詩形はこれしかないありがとう