■旭川詩人クラブの「詩めーる旭川」第19・20数集 合併記念号ー富田正一 追悼号ー(旭川詩人クラブ 2021年6月25日)
冒頭に富田正一さんの遺稿「旭川詩人クラブ誕生」、
富田さんが名寄から旭川へ活動を移した頃のこと、下村保太郎との温かい出会い。
東延江さん、出雲章子さん、荻野久子さん、沓澤章俊さん、立岩恵子さん、森内伝さんによる追悼文、
旭川詩人クラブメンバーによる詩・エッセイ。
巻末には1977年の発足当時から現在までの44年の「旭川詩人クラブの歩み」。
同封された東延江さんからの手紙には、最終号とあります。
柴田はエッセイ「二〇一六年 第三〇回詩画展 講話と〝詩と遊ぼう〟」で
初めて旭川詩人クラブの集いに参加させて戴き、
東延江さんの講話「昭和初期の旭川の詩人たち」を拝聴した2016年11月のこと、
初めて富田正一さんにお会いしたときのこと(その場には佐藤比左良さんもいらした…。)、書かせて戴きました。昨日のことのように想起致します。(畏れ多くも拙稿、先日東延江さんに御精読戴き、お直し戴きました。)
そして富田さんに捧げる詩篇「領域」を寄稿致しています。
コロナが落ち着いたら…、ぜひ最後の集まりに参加させて戴きたく存じます。
長い歴史を持つ、旭川詩人クラブの活動が終わろうとしています。
*
「 領域 」 柴田望
報道と市の認識に「隔たりがある」
隔たりが招いたのか
調査する側の都合で変わるのか
教科書が笑う
当時の航海技術では捕虜を運べません
シベリアに抑留なんてありえない
いじめか、いじめではないか
シャベレルカ、シャベレナイカ…
加害者の中から生まれたのか
どちら側かを決めるのは力か
教科書から消したのだ
黒珊瑚と呼ばれた詩人が
少女の心に寄り添い書いた記事を*
九州大刀洗飛行場、加世田市万世飛行場で
死地へ赴く仲間を見送った
十八歳で復員、これからは心の時代だ
「拠り所」を築くために
十九歳から九十一歳までの七十二年間
声なき声
言葉にならない言葉
表現の自由に生涯を賭けた
少年兵のいくさは終わりましたか
続きますか
領域が当然のごとく
奪われるものとしてある限り
*黒珊瑚(小熊秀雄)署名記事「北都高女生山田愛子が投身自殺するまで」(『旭川新聞』大正十二年) 金倉義慧著『北の詩人 小熊秀雄と今野大力』(高文研)に全文収録。