詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■「晨」第23号(代表・中尾敏康氏 2021年6月5日)

■「晨」第23号(代表・中尾敏康氏 2021年6月5日)を拝読させて戴きました。誠にありがとうございます。
 二宮清隆さんのエッセイ「合評会」に、石原武氏の言葉「二宮君の詩はドキュメント詩だ」との評、対象の細やかな動きや心象の記録、その時その場所の経験を読者に追体験させる二宮さんの力量を石原武氏は見抜いていたのだ。コロナ禍で合評会がやりにくくなりましたが、批評、激励し合う合評会の場を懐かしく想います。
 広瀬大志氏による原島里枝詩集『耳に緩む水』(七月堂)の書評「緩む水に咲く耳を追って」を興味深く拝読。「水」の姿の織り込み、「水」が言葉を綴る。その象形は「死生観に裏打ちされた儚さ」、「詩的宇宙を表象」、「憂いと優しさを秘めた希望の歌」を秘め、音楽のように「ゆるぎないもの」へ触れる。美しいこの詩集をめくると、水の流れを知覚できそう。詩は一滴の雨から海を導き出す。
 中尾敏康氏の作品「音」、言語によって、暗闇の中の光のように、沈黙に顕れる、感情を伴う「まじりけのない意味を持っ」た音の記憶、発せられたのは一回限りのはずなのに、遠い時間を超えて詩が蘇らせる。音は「完結を阻」む。生きている。

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