■月刊誌「グラフ旭川」8月号に、「フラジャイル」同人、詩人・荻野久子さんによる詩篇「黒土」が掲載されています。心の洗われるような荻野さんらしい視点、「是と/非とが/交流する暮らしの中で」、誰かが誰かを叩く…善悪の二元論に満ちた情報の奔流を超えた「奥深い真理」の次元。すべての生命の源の純粋さに届く日常の関り。身体に染みこまれていくような気づき。「黒土は怒らない/愚痴をこぼさない/意地悪をしない」。
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「黒土」 荻野久子
我が家の黒土は
とても純粋で
動物にとっても
植物にとっても
貴重な存在
日常との触れ合いは
母の腕(かいな)のような
いのちの会話をしている
もしかすると
私は
土から生まれたのか知れない
穏やかな田園風景を
ささくれた風が吹き荒れても
黒土は怒らない
愚痴をこぼさない
意地悪をしない
奥深い真理が
閃いている
是と
非とが
交流する暮らしの中で
黒土の領域が
侵されていく声が聞えてくる
黒土の体臭が
私に染みついて
日々足元を
深く見つめるばかり