詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■2023年5月13日(土)​第56回小熊秀雄賞贈呈式✨

■2023年5月13日(土)​第56回小熊秀雄賞贈呈式✨(会場:アートホテル旭川3Fハマナス&4F平安)、おかげ様にて無事行うことができました。市民実行委員会として、準備から受付~本会~囲む会…会計も行いつつ(笑)、恐縮ながら鎌田尚美さん、津川エリコさんとも詩や文学のお話ができ、本当に貴重な時間を過ごさせて戴きました。ご協力戴きました皆様へ心より感謝申し上げます。本日の北海道新聞に大きく掲載されております📰

・小熊賞は毎年、4月の最終選考の議論が大変白熱するのですが、今年は驚くほど、呆気ないと言うかすんなり決まってしまって、むしろ2月の1次選考会のほうが意見が割れたり、白熱の議論もあって、その記録も提出させて戴きましたが、結構長く時間がかかっておりました。
 1次選考会の議論の中で、詩の歴史を変えてしまうような凄い詩集だ!という話になり、ちょっと朗読してみて、と言われて、私が朗読した、ただ一つの詩集が『持ち重り』です。そのときは「思川」を朗読させて戴いたと記憶しています。
 1次選考のメンバーは、毎年100冊前後の詩集を、年末年始、お正月返上にて必死で読んでいくわけですが、その段階から既に他の詩集とは違う彩を放っていました。

・現代詩は、言葉を使って、普通の言葉では表せないような、目に見えない世界を開く、そんな表現が多いのですが、詩集『持ち重り』は、目に見える、手に触れられる実質的な世界が、目に見えない、異質な世界の入口になっている。ぞくぞくする面白さ、まったく飽きさせない詩集です。

・そして多くの優れた現代詩は、言葉が「通常の意味から離れていく」という実感を読者に与えますが、『持ち重り』を読んでいると、言葉で書かれた物や、動物、植物たちの存在が、ふだん私たちが暮らす世界で持っているような普通の意味から離れていく。その驚くべき動きを読んでいくと、これまで主題にされていなかったものが、主題に変換されていく、その変換は、非現実、反リアリズム的な表現の手法であるにも関わらず、本当の現実の姿を不気味なほどリアルに顕してくるような変換であり、独特な「ユーモア」と「風刺」の力で成り立っている。僭越ながら、私はそのように読ませて戴きました。SDGsのことをこんな風に詩で表現できるのですかっ、、現代の風刺詩✨、まったく新しい詩の力に引き込まれました。

・「ユーモア」と「風刺」、そして人々が生きている社会の姿を顕していくこと。これは小熊秀雄の詩を語る上での最大の特徴であると考えます。鎌田尚美さんに、今まで足を踏み入れたことのない、新しい詩の領土へ連れていって戴きました。本当にありがとうございます。

・記念講演では、昨年詩集『雨の合間に』で第55回小熊秀雄賞を受賞された津川エリコさんの貴重なお話を伺えました(記念講演「文学の国アイルランドと北海道」)。アイルランドという土地について北海道との比較、ノーベル文学賞を受賞したアイルランドの作家・詩人たち。また、アイルランドにも文学が教会によって統制された時代があること、現在のアフガニスタンの詩の禁止令(詩人ソマイア・ラミシュさんの抵抗の呼びかけ)、つい90年前には日本でも文学者が弾圧された多喜二の時代についてもお話を戴きました。

・津川エリコさんが旭川東高校で佐藤喜一から学ばれたと知り、昨年、とても驚きました(選考の段階では誰も知りませんでした…)。昭和42年に第一回目の北海道新聞文学賞を受賞された佐藤喜一『小熊秀雄論考』が発行され、そのことが契機となり、常磐公園小熊秀雄の詩碑が建立され、中野重治、坪井繁治、三浦綾子、文学の世界の錚々たる方たちが記念の式典に集い、塔崎健二さんが朗読をされた、そして昭和43年に第1回の小熊秀雄賞がスタートしました。名著・佐藤喜一『小熊秀雄論考』の存在が、小熊秀雄賞がはじまるきっかけになります。その佐藤喜一に師事した津川エリコさんが小熊賞を受賞され、小説『オニ』で北海道新聞文学賞を受賞されたことは、北海道、旭川の文学の世界の歴史に刻まれる、私たち旭川市民にとって、本当に大きな意味のある、喜ばしいことでした。

旭川の古い文学の歴史、小熊秀雄賞という詩の賞が受け継いできた文化の歴史を大切に、次の世代へ、そして全国の多くの方へ伝えていきたいと心から願っております。
 歴史ある小熊秀雄賞を受賞された鎌田尚美さん、津川エリコさんへ心よりお祝いと感謝を申し上げます。

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