詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

詩集『遠い庭』(大木潤子著・思潮社)

■今日の北海道新聞南空知版に、約半世紀にわたって市民に親しまれてきた「交響詩岩見沢」を次世代に伝えようと、絵本『岩見沢の詩(うた)』が制作された記事が掲載されました。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/877527
交響詩岩見沢」小学から高校までずっと、多くの市民が歌ってきたのですが、混声四部で詩の渦を巻き起こすような経験でした。
 ここ一ヶ月程、詩集『遠い庭』(大木潤子著・思潮社)を携え、白いページに端正に刻まれた言葉を何度も拝読しつつ、熱心に合唱に取り組んでいた子ども時代の、演奏が上手くいった、小さな風を巻き起こせた和声の感触を取り戻しておりました。「知らない歌」「分からない歌」の断片の蓄積、「白い、砂の顔が/いくつもあらわれて/歌を歌う」、「着物を、見ていて それが/人の体に/まとわりつく/少しずつ/燃えていく」といった詩行から宇宙の渦が形象され、「風に乗って/形に見える物になったり/ばらばらの粒になったりする」経験からは、有機の根源に繋がる内密の領域の引力によって巻き起こされる無限性、まいまいず井戸や環状列石の力動的な調和を夢想します。「何もない空間に/射す光のような歌が」…何度同じ歌を歌っても最初の音符を発するたびに一回限りの新鮮さが吹きこまれる。声に命が吹きこまれていくのです。

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