詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■『伊東静雄ー戦時下の抒情』(青木由弥子著・土曜美術社出版販売)

■青木由弥子さんの上梓された『伊東静雄ー戦時下の抒情』(土曜美術社出版販売)、「四章・伊東静雄とその時代」〈1・戦時下の葛藤〉に、昭和十二年、「詩壇に影響力を持つ”大家”が率先して国家のための”責務”を果たそうとした」「その動向に真っ先に反応し批判しえたのは、幾度も官憲に逮捕されている”市民社会”のアウトロー的存在だった小熊秀雄のみだった…」、小熊秀雄のことを書いて戴きましたこと、胸熱く、旭川の詩人として心より感謝申し上げます。
 私は伊藤静雄については筑摩書房の『現代文学大系67・現代詩集』を大学時代に読み、「わがひとに与ふる哀歌」の太陽が胸ぐらをつかんでくるような暴虐的なほどの美しい静けさを幻視し、渋沢孝輔「水晶狂い」の太陽やTheDoorsの「Waiting For The Sun」というベトナム戦争時代のすべてが詰まっているような名曲を想起した体験がありましたが、詩人について詳しく存じておりませんでした。「戦時下の”非常時”に柔弱なもの、ささやかなものへ向かう志向が強まっていった」「迫ってくる暗鬱の中にあっても文学者としての目に見えにくい、だがしぶとい抵抗の跡を刻もうとしていたことが見えてくる気がする」というご指摘に激しく心動かされ、開戦前夜の切なる祈り、「心の目で見、魂の手で触れられる世界」への導き、一篇一篇の詩の本質へ向き合い、読み手として書き手に憑依し、共鳴を起こすような境地へ丁寧に誘われる興奮を覚えております。この御本に詩の読み方を教わり、何度も拝読させて戴きます。心より感謝申し上げます。

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