詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■9月16日(土)14時より、三浦綾子記念文学館にて「文学講座:旭川の詩の世界~過去・現在・そして未来へ」(講師:柴田望)

■9月16日(土)14時より、三浦綾子記念文学館にて「文学講座:旭川の詩の世界~過去・現在・そして未来へ」、僭越ながら90分間お話しをさせて戴きました。貴重な機会を賜り、心より感謝申し上げます。後日YouTubeで録画配信。旭川ケーブルテレビさんでも放映戴けるとのこと、恐縮致しております。
https://www.miura-edu.com/?p=17028
 今年、旭川で起きた大きな事件!漫画家・日野あかねさんによる『詩人小熊秀雄物語』。かつての旭川の詩人たちの活躍をカラフルな絵で表現し、登場人物たちの青春の煌めきが躍動的に描かれたことが本当に嬉しく感動的です。旭川文学資料館で現在展示開催中!(9月末まで)。小熊秀雄が漫画で表現されたことも驚きですが、こんなふうに漫画で描いていいんだ、自分たちのやり方で、様々なジャンルでそれぞれの小熊秀雄や過去の文化が表現され、継承される…そんな次世代のための道を拓いてくれたように感じます。
 日野あかねさんの『詩人小熊秀雄物語』の主要登場人物(小熊秀雄、鈴木政輝、没後88年の今野大力、小池栄寿)に焦点を当て、1993年に北海道詩人協会から発行された『資料・北海道詩史ー明治・大正・昭和ー』に記された旭川(第8章)の詩の歴史をお話しさせて戴きました。「北海道の詩壇の胎動は旭川から拡充した―」…その中心人物であった鈴木政輝(萩原朔太郎川端康成と交流)と加藤愛夫(生田春月に師事した岩見沢の詩人、交響詩岩見沢の作詞者)、更科源蔵(北海道を代表する詩人・アイヌ文化研究者。真壁仁、伊藤整らと交流)の三人が1954年に発起し、全道の詩誌へ呼びかけることでスタートした『北海道詩集』が今年10月に第70号発行。北海道詩人協会が第60回(フラジャイル同人の小篠真琴さん、木内ゆかさんの詩集が受賞)と、2023年は節目の年であります。
 特攻隊を見送る通信兵であった富田正一さんが名寄へ復員し、「これからは心の時代だ」と詩誌「学窓」を発行したのが1946年(昭和21年)。以降、「七ツ星」「青い芽」「青芽」と名前を変えながら道内最長の72年間、発行が継続されました。小熊秀雄の親友であった小池栄寿に師事した富田正一さんの功績と詩作の特徴、そして小熊秀雄の詩を「絶望に彩られつつ自己を構成していく志向」「その自己革新の激情が外部現実と切り結ぶことによって生ずる〈観念の爆発的燃焼〉」「灰色の鎮魂歌であるような同時代の文学全体に対し謀反と拒否と異議申し立てをたたきつけている」と論じ、詩の本質としての反世界性、存在の本質を捉えることができた小熊秀雄の特性を論じた文芸評論家・高野斗志美先生(三浦綾子記念文学館)の著書『存在の文学』(三一書房)、『青馬の大きな感覚‐小熊秀雄』(花神社)を紹介させて戴きました。
 現在の旭川の詩の活動の紹介として、今年1月にタリバン暫定政権がアフガニスタン国内で詩を禁じたことに抵抗し、オランダに亡命中の詩人ソマイア・ラミシュさんから発せられた「世界の詩人たちへ~抵抗のための詩を送ってください」というメッセージを旭川から全国の詩人へ発信し、詩作品を集め、アフガニスタンにとっても日本にとっても特別な日である8月15日に日本人詩人36名、海外詩人21名の作品を収めた『詩の檻はない NO JAIL CAN CONFINE YOUR POEM』を旭川の詩人が発行。8月24日にはまちなかぶんか小屋でイベント「世界のあらゆる地域が夜」を開催。日本にも詩を自由に書くことのできなかった時代があり、社会の混乱、戦争、貧困の時代がありました。米軍が撤退したアフガニスタンと、米軍が撤退しない日本。現代の日本の情況は、現在のアフガニスタンの情況と非常に複雑な構造で密接に関連しているように感じ、過去100年の北海道の詩の歴史を振り返ると他人事に思えなかったことが、柴田がソマイアさんの呼びかけに応じた理由の一つです。講演の中で鈴木政輝の詩篇「一マルキストの死~詩人にして異端者の同郷の友、今野大力の死」、富田正一さんの詩篇「コスモス」を朗読させて戴きました。 
 恐縮ながら会場にお越し戴きました、漫画家・日野あかねさんの『詩人小熊秀雄物語』が、歴史の情報の核のように、様々な資料、文献や歴史を知る人たちとの出会い、旭川という街の文化や生きた歴史と放射状に無数の糸で繋がり、新しい時代を紡いでいることに感動致しております。非常に勉強熱心なご姿勢で、膨大な本を読み、創作に取り組まれるご姿勢。こうした取り組みが未来を創造していく。そして旭川の詩の歴史、文化の歴史を、将来に向かって、新しいかたちで、媒体やジャンルも違うかもしれませんが、継承されていく、新しい創作活動が広がっていくことを夢見ております。
 1910年(明治43年)に旭川で発行された最初の詩歌誌「冷光」(小林幸太郎)から今年で113年という長い歴史があるというお話から、2023年の現代の私たちの活動、そして未来には、もっと若い人たちが、自分たちの解釈で、小熊秀雄や今野大力、もっと後の時代の旭川の詩人たちや、更科源蔵、河邨文一郎らとの関わりなどを語っていく、漫画や、アニメやWEB上の新しい表現など、それぞれの時代のやり方で次の世代へ繋いでいく、そのための学びや行動を重ねていくことが必要だと思っております。
 「フラジャイル」は「こわれもの」の荷札。皆様のご支援を戴きながら創刊から5年が過ぎ、おかげ様にて9月に第18号を発行できました。今後も皆様から学ばせて戴きつつ、旭川の詩文化を大切に、新しい時代に繋いでいくことができますよう取り組んで参る所存です。引き続きどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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