詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■10月30日の北海道新聞、第57回北海道新聞文学賞の最終候補に詩集『帶』、12月8日イベント、「古川善盛 切り文字展」11月22日~12月11日

■10月30日の北海道新聞、第57回北海道新聞文学賞の最終候補に、拙詩集『帶』を残して戴き、記事中「後半の叙事詩が迫力」との一文を戴いております。大変光栄なことです。心より感謝申し上げます。最終候補にして戴きましたのは、柴田はなんとこれで11回目になります…
2001年11月 第35回 『SIGN OF THE TIMES
2006年11月 第40回 『コンサートホール』
2007年11月 第41回 『音楽』
2008年11月 第42回 『砂の女
2009年11月 第43回 『アルバトラス』
2010年11月 第44回 『そうさくれんさ 野口真七代表詩選(1975-2009)』
2014年11月 第48回 『ドルフィン』
2017年11月 第51回 『黒本』
2021年11月 第55回 『壁/楯/ドライブ/海岸線』
2022年10月 第56回 『4分33秒
2023年10月 第57回 『帶』
 北海道詩人協会賞を戴いた『顔』(2019年)は候補になっておらず…応募した全作品ではありませんが、道新文学賞はノミネート最多記録を更新中にて、拙いながら私は毎年この賞を一番楽しませて戴いている詩人の一人だと思います。心より感謝申し上げます。

 詩集『帶』は表紙に谷口雅彦さんのお写真「昭和最後の日の太陽」を使わせて戴き、北海道の先達詩人・古川善盛の作品と生涯に向き合うかたちで編集致しました。時代の価値観の裂け目を剥きだすように、Ⅰ部、Ⅱ部、Ⅲ部で書き方が変わります。私たちの生きている世界はトータルではなく、メルクマールの結び目であり、太陽の周辺の帯、街灯の虹、フィルムの、カセットテープの、地表に剥きだされる根のように生きている切り文字の、書籍の帯、遠い帰郷の線路の帯、古川奈央さんからお借りした沢山の資料を手掛かりに、生を吹き込まれて人称となる帶の表現を目指しました。この本に息を吹き込むためのイベントを古川善盛さんのお誕生日である12月8日に予定します。古川善盛さんの切り文字展も11月22日~12月11日開催。いずれも俊カフェさんにて。ぜひお越し戴けましたら幸いです。

*お知らせ* 
2023年12月8日(金)、俊カフェさんにてイベントを開催させて戴きます。
「 帶 詩人 善盛さんの時代 ~現実の異端を書いた詩人の消息」
2023年12月8日(金)15:00~17:00
会場:俊カフェ (札幌市中央区南3条西7丁目4 Kaku imagination 2F)
料金2,000円 (ワンドリンク+お土産の冊子 付き)
ご予約・お問合せ
TEL:090-3396-6685 (柴田望)
TEL:011-211-0204 (俊カフェ・火曜定休)

■今年8月に『帶』(デザインエッグ)という詩集を発行していたのですが、ごく一部の方にお送りしたきりで、『詩の檻はない』の発行やイベント等が立て続けにあった中、なかなか忙しくなってしまい、皆さんにお知らせしたり、謹呈を送らせて戴くということができずにおりました。
こちらの発行への想いと、私の拙い研究のしかも途上ではありますが、詩人・古川善盛のこと、同時代の北海道の詩について等、古川善盛さんのお誕生日であります12月8日にお話させて戴きたく存じます。
「古川善盛 切り文字展」も11月22日~12月11日の会期で行われます。ぜひ俊カフェさんへ足をお運び戴けましたら幸いです。
『帶』
https://x.gd/YLyk7
・戦後、「扇状地」「野性」「詩の村」などで活躍した詩人であり、編集者としても重要な編書を数多く残した古川善盛の仕事を一冊の詩集で辿ろうとした試みです。創成期の北海道詩人協会にも所属していた詩人で、初期の『北海道詩集』に作品が掲載されています。謎めいた詩歴をもち、更科源蔵や江原光太、河邨文一郎らと活動を共にし、詩の派閥を超越した存在です。詩集は1996年の12月8日(誕生日!)に、親友で「詩の村」の村長 堀越義三によって発行された『鬼郷七番通』(現地出版)の一冊のみ。この本の帯には一篇の詩「よいしょ」が刻まれています(昨年8月、柴田はKSJ2022北海道大会のカリブラージュでこの詩を暗唱)。
・古川奈央さんより資料をご提供戴き、初期の詩篇や詩誌に掲載された詩篇、散文、新聞記事、江原光太の「妖」の特集、長光太による評価も…。海を越えた謎に迫る「ナニヤドラヤ」という作品は中央の詩誌で谷川俊太郎により激賞されていました。
 詩集『帶』をまとめるにあたっては、ガリ版刷りの「扇状地」や「野性」に書いた詩(戦争体験による価値観の転換や、社会構造の偽りを暴くような鋭く哲学的な作品群)に対峙し、同じ語彙を一切使わず、引用も一切行わず、まったく異なる短詩形で表現しようと試みたのが第一章、第二章は詩人古川善盛が活動していた時代、昭和・平成に私自身が何をしていたか、自分の行動や経験の中で、古川善盛が遺した仕事や作品の問題提起に感性が触れて詩が浮かぶのを掬おうとした作品、第三章は編集者古川善盛にとって最も重要な仕事の一つである、1974年に発行された『実録土工玉吉―タコ部屋半生記』( 太平出版社)、77年に発行の続編とともに、髙田玉吉の回想、北海道におけるタコ人夫の壮絶な実態を暴き出した二冊を、髙田玉吉が語る言葉を古川善盛が一言も漏らさず聴きながら文字に起こし、本に構成していく魂のセッションの現場の幻が立ち昇るまで何度も読み、物語を8編の長詩形に憑依させることができますよう再構成致しました。
・古川善盛さんの切り文字作品は帯のようであり、一部しか地上に見えない長い樹の根のような永遠であり、映画のフィルムのようでもあります。今はフィルムのカメラの時代ではありませんが、映画『眩暈 VERTIGO』(井上春生監督)の冒頭で、詩人 吉増剛造氏はカメラの中からフィルムが出た!世界に膜が張られていると表現されていました。手書き原稿用紙の升のようなフィルムの回転の流れは失われた野性であるかもしれません。詩集『鬼郷七番通』に収められた詩「背からの声」は、「雪の底を人があるく/雪の天に背を曲げながら/雪を頭につもらせながら/雪に埋もれまいと人があるく」、まさに古い映画の一シーンのように描かれています。幼い娘を背負って雪の中を病院へ急ぐ詩人の目には、街灯が映ったのではないでしょうか。雪の中の街灯の明かりは周辺に丸く虹を帯びたのではないでしょうか。太陽の光の輪の帯のようであったのではないでしょうか。時空を超えて詩人の時代へ近づくための通路が開かれますように、写真家・谷口雅彦さんにお願い申し上げ、「昭和最後の日の太陽」を表紙に使わせて戴きました。心より感謝申し上げます。
・「古川善盛 切り文字展」
会場:俊カフェ 会期:11月22日(水)~12月11日(月)
・「 帶 詩人 善盛さんの時代
 ~現実の異端を書いた詩人の消息~」
2023年12月8日(金)15:00~17:00
会場:俊カフェ (札幌市中央区南3条西7丁目4 Kaku imagination 2F)
料金2,000円 (ワンドリンク+お土産の冊子 付き)
ご予約・お問合せ
TEL:090-3396-6685 (柴田望)
TEL:011-211-0204 (俊カフェ・火曜定休)
『帶』  柴田望詩集
表紙写真 ‏ : 谷口雅彦「昭和最後の日の太陽」
出版社 ‏ : デザインエッグ社  
発行日 ‏ : 2023年8月9日 ISBN-13 : 978-4815039318

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