詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■~日常にある「ととのわない」想い、12名+αの作家の息吹で綴る~同人誌「温々」(null‐null、ぬるぬる 創刊号)

■~日常にある「ととのわない」想い、12名+αの作家の息吹で綴る~同人誌「温々」(null‐null、ぬるぬる 創刊号)に2023年、参加させて戴きました。浅野葛さんと高細玄一さんの共同発起。「混沌とする時流のなかで、あえて正解を求めない」…「ととのう」時流へ反抗する真摯なるぬるさの追求、浅野葛さんによる「世界でいっとう、ぬるい闘い」試論、あとがきの高細玄一さんによる「人と言葉の距離」の問題提起。同人の皆様の作品(詩、小説)も鋭く、価値観を固着させず揺るがすような、ぬるくて熱い、現代を照射する同人誌です。11月の東京文フリにて好評を得たとのこと、嬉しい限りです。拙詩5篇にて参加させて戴きました。心より感謝申し上げます。

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「 禁忌 」  柴田望
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隙間から草を食べる
せわしない口を見ていた
両親がポストみたいな小屋を建てた
 
白黒がいた小屋に
白い友だちを入れた
数か月で友だちは死んだ
 
引っ越しとともに
小屋も移設された
級友がやってきて 
兎の顔をして羨ましがった
 
庭で遊ばせると
うれしそうに跳ねた
本当の自分に戻るように
妹と私も跳ねた
手のひらサイズだったのが
犬や猫ほどになり
小屋は狭くなった
何年もかけて
網と木の繋ぎ目を
根気強く広げた
 
何を罰せられたのか
家族の一員だったのに
何が迎えに来たのか
 
自由になれたのは
ほんの一瞬だった
アスファルトに出たとたん
容赦なく轢かれた

白黒が紅く染まり 
無残な姿を見せまいと
両親がそっと葬る

きっと山へ逃げたのだ
そのほうが幸せなのだ
妹は泣きながら信じた 
うれしそうに跳ねていると

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