詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■柊月めぐみさんの『星降る森の波音』(土曜美術社出版販売 2023年12月5日)

■柊月めぐみさんの『星降る森の波音』(土曜美術社出版販売 2023年12月5日)を拝読させて戴きました。ご恵贈賜り、心より感謝申し上げます。ご出版をお祝い申し上げます。
 「作陶」は生と死の造形。「死んだら何になるのかと問うと/ただかえるだけと答えたひとは/どこをさまよっているのだろう」…体を埋葬されても、人は彷徨う。体を葬られた灰は土となり「冷たい土の塊は静かに待っている/身をよじり くねらせながら/全身を預けるそのときを」。土は生きた人の手に預けられ、叩かれ、伸ばされ、音色の変奏のように練られ、再び焼かれ、再び命を与えられ、「完成することのない造形を/抱きくるむ」器に仕上がる。
 「火が土を舐め/鉱物がとける/幼体がとける/服が燃え肉が消え/白く焼きがったひとに似て/壺はかろやかに美しい」。その人はかつて星を眺め、森の波音に耳を澄ませただろうか。その手は陶器を作っただろうか。「連鎖する。引き継がれる記憶。繰り返される歴史。どこかで」(「再生」)。

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