小樽のジーンズショップロッキさんの小熊秀雄Tシャツで出演させて戴きました。日野あかねさんの『漫画詩人小熊秀雄物語』、旭川の市民実行委員会が運営する「小熊秀雄賞」、旭川文学資料館、旭川歴史市民劇、詩碑、検閲の時代を生きた小熊秀雄の詩碑のある旭川の詩人としてアフガニスタンの詩作禁止令に抵抗するソマイア・ラミシュ@SomaiaRamishさんのBaamdaadに連帯した詩誌「フラジャイル」第19号の特集、『NO JAIL CAN CONFINE YOUR POEM 詩の檻はない』のこと。最後に「蹄鉄屋の歌」を朗読させて戴きました。
本日夜と2月中前半にも何度か再放送されます。ぜひご覧戴けましたら幸いです。
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【小熊秀雄について】
ジャンルを超えたアーティストです。困難な時代に、自由や理想うたい、大胆なエネルギー溢れる作品を書きました。『飛ぶ橇』、『長長秋夜』、『小熊秀雄詩集』、『流民詩集』などが代表作に挙げられます。
1901(明治34)年9月生(諸説有)。3歳の時に母を失い、稚内、樺太、秋田県などに移り住み、樺太の尋常高等小学校を卒業後は、漁師や農業、工場など様々な仕事をしています。1922(大正11)年に、お姉さんのハツさんを頼って旭川に住み着き、旭川新聞で記者となり、文才が認められ文芸欄も担当。この頃より短歌や詩作を始めます。
20歳くらいから昭和3年くらいまでの5~6年くらいの間、旭川で新聞記者として、詩人として精力的に作品を発表し、旭川で大活躍します(当時の旭川の様子が那須敦志さんの脚本に描かれたのが、2021年の旭川歴史市民劇「旭川青春グラフィティ ザ・ゴールデンエイジ」です)。30歳くらいの頃は東京でプロレタリア文学運動に参加し、弾圧検挙に巻き込まれ、逮捕されたり、一時は発表の場を奪われましたが、1934(昭和9)年には詩誌『詩精神』を創刊。「働く詩人」を自称し、書斎派の詩人たちにはない、奔放で大胆かつエネルギーあふれる作品を発表。1935(昭和10)年には『小熊秀雄詩集』を刊行。長篇の『飛ぶ橇』、『長長秋夜』なども発表し、詩人として確固たる地位を確立。以降は当時の口語・日常語を巧みに生かした風刺詩なども残し、様々な新聞や雑誌に詩や、小説、評論などが掲載され、引っ張りだこになっています。1939(昭和14)年には、『愚感詩集』『逍遙詩集』『流民詩集』『通信詩集』と立て続けに作品を発表。旭太郎の筆名で漫画原作も執筆。1940(昭和15)年に原作を担当した漫画『火星探検』(大城のぼる作画)は、日本のSF漫画の先駆的傑作です。
大正終わりころから太平洋戦争末期にかけて池袋モンパルナスというアトリエ村があり、池袋周辺に在住していた画家や音楽家、詩人などの若い芸術家を集い活動拠点としていました。小熊秀雄がそのアトリエ村を「池袋モンパルナス」と命名し、若者たちの様子を「池袋風景」と題する詩に表現しました。
【日野あかねさんの漫画】
昨年の注目すべき出来事として、この「ポテトにこんにちは」にも出演された、漫画家の日野あかねさんが描かれた『漫画 詩人小熊秀雄物語』が出版されました。日野あかねさんは17歳でデビューされたプロの漫画家の先生で(単行本『のほほん亭主、がんになる。』など)、旭川の文化・歴史の魅力、気づきや感動を猛烈なスピードで絵に変えていく…、毎日のように新作をSNSにアップしておられます。2023年7月に『漫画 詩人小熊秀雄物語』刊行!アマゾンKindle版は1,650円(税込)、あいわプリント書籍版は3,300円(税込)。
ブックマークカフェ、旭川市中央図書館、旭川文学資料館でも日野さんの漫画の展示が開催され、多くの市民が足を運んでいます。詩人・小熊秀雄と言えば壮絶な暗い時代の象徴のように考える方も多いですが、高らかに笑う哄笑の詩人であり、底抜けに明るいユーモアの感性が詩に溢れています。日野さんはその輝きをカラフルな絵で表現し、登場人物たちの青春の煌めきを躍動的に描いています。小熊秀雄が漫画で表現されたことも驚きですが、こんなふうに漫画で描いていいんだ、自分たちのやり方で小熊秀雄を…と、様々なジャンルでそれぞれの小熊秀雄が表現される、次世代のための道を拓いてくれたように感じます。そして、なんとこの漫画の主要人物のお孫さんが、X(旧Twitter)で日野さんの絵を見たのがきっかけで、7月に旭川へ来られ、旭川文学資料館で貴重な写真や資料に触れる喜びの瞬間が溢れ、図書館の展示で記念撮影し、日野さんに感謝をお伝えたされたということがありました。旭川の歴史や文化が現代へ受け継がれていく、現代の人たちに広く伝えられていくということは非常に感動的なことです。
【小熊秀雄賞市民実行委員会】
1967(昭和42)年に、文芸評論家で旭川東高校の先生であった佐藤喜一さんが、第1回目の北海道新聞文学賞を受賞された『小熊秀雄論考』という評論を発表され、小熊秀雄再評価の契機となり常磐公園に小熊秀雄の詩碑が建立されました。除幕式には、中野重治、坪井繁治、三浦綾子、更科源蔵…、文学界の錚々たる方たちが集い、塔崎健二さんが朗読をされました。翌昭和43年に第1回の小熊秀雄賞がスタート。当時の旭川文化団体協議会が運営し、3回目までは道内の詩人が受賞。4回目から全国賞となり、錚々たる詩人たちが受賞者に名を連ねます。こうした詩の賞の運営も大変なことで、2005年の第40回で終了が発表されたのですが、全国から惜しむ声が相次ぎました。そこで、2006年11月1日、現在の小熊秀雄賞市民実行委員会が、小熊の業績をたたえるとともに、「北の文化」として受け継ぐべく発足しました。
4月に旭川の扇松園で最終選考会が開催され、4人の最終選考委員の先生方(佐川亜紀さん、アーサー・ビナードさん、松井晶彦さん、堀川真さん)の激論が繰り広げられます。小熊秀雄賞市民実行委会の会員の方は、最終選考の場に立ち会うことができます。「あさひかわ新聞」には毎年特集的に、この小熊秀雄賞の最終選考会の様子が掲載されます。一冊の詩集、一篇の詩を読むということがどういうことか、どの視点から、歴史的、文化的、表現の問題も含めて、小熊秀雄だったらどう読むか。詩の作品そのものの本質について、純粋な議論が交わされる素晴らしい場です。
5月にはアートホテル旭川で、盛大な授賞式が行われます。受賞者の朗読・スピーチや、記念講演もあります。こちらは会員だけでなく一般の方もご参加戴けます。会員の方にはご案内やお知らせ、会報なども送らせて戴きます。
小熊秀雄賞市民実行委員会、個人の年会費は2,000円からとなっております。ぜひご入会戴けましたら幸いです。
事務局・連絡先は〒070-8003 旭川市8条通6丁目あさひかわ新聞内 小熊秀雄賞市民実行委員会、TEL:0166-27-1577になります。小熊秀雄賞の応募につきましては、毎年1月末日が期日。発行詩集5冊をお送り戴きます。応募の要綱はこちらになります。
今年ももう100冊程寄せられ、私たちは一冊一冊を大切に読ませて戴いております。選考結果は4月中旬、各主要新聞で発表。正賞は「詩人の椅子」1脚、 副賞30万円となっています。
【旭川文学資料館・詩碑・「青芽」・「フラジャイル」について】
旭川にはゆかりのある代表的な井上靖の記念館、三浦綾子の記念文学館があります。そして記念館や文学館はないですけれど、前回この番組でご紹介した安部公房、そして戦前には詩人の小熊秀雄が活躍したことを多くの方に知って戴ければと思います。旭川文学資料館へお立ち寄り戴き、展示室の一番奥に、貴重な資料や、小熊秀雄が書いた手紙、実際に小熊が使用した机なども展示されています。後世に与えた影響の広がりも学べる素晴らしい展示です。常磐公園の文学資料館すぐ裏に、小熊秀雄の詩碑があります。壺井繁治の揮毫で、無題という詩が刻まれています。
小熊秀雄には旭川に詩や文学の友だち、画家でしたら髙橋北修さんなど、友人がたくさんいたのですが、その中でもとくに親しかった小池栄寿という詩人がいます。旭川や名寄などで教員生活を送りながら詩や短歌の創作を続けた方で、「小熊秀雄との交友日記」という手記を残された方です。大正末から昭和初期に活躍した小熊秀雄をはじめとする文化人や経済人、社会運動家たちが意気盛んに活躍したことが書かれており、大変貴重な資料なのです。その小池栄寿さんから詩を習ったのが、旭川の詩人・富田正一さんです。富田正一さんは戦後72年間、名寄・旭川で『青芽』という詩誌を発行し、詩人たちの発表の場を築きました。旭川市の文化功労賞を受賞されている富田正一さんの『青芽』の後継誌が、「フラジャイル」です。2017年に創刊、昨年2023年12月に第19号を発行致しました。旭川から発信していますが、道内のみならず全国の詩人にご参加戴いております。
【『詩の檻はない』について】
「フラジャイル」第19号(2023年12月発行)は、アフガニスタンの詩人で、現在オランダに亡命しているソマイア・ラミシュさんのメッセージや作品を掲載しています。アフガニスタンはタリバン暫定政権により詩を書くことが禁じられ、映画や音楽も禁止、女性の教育機会や人権そのものが剥奪され、国際的に非常に問題になっています。ソマイアさんが勇気を出して、世界にアフガニスタンの状況を訴え、自由を求めて戦っています。今日ご紹介した小熊秀雄が、検閲の時代を生きた詩人ですから、小熊秀雄の芸術に対する純粋な気持ちを引き継ぎ、私たちは旭川の詩人としてソマイアさんを応援しなければならないと思い、特集を組んでいます。昨年8月15日、日本を含めた世界各国の詩人たちから寄せられた詩を集めた『NO JAIL CAN CONFINE YOUR POEM 詩の檻はない』という本を発行しました。この活動について、日本ペンクラブ(獄中作家・人権委員会)、日本現代詩人会からも支持声明を戴きました。現在発売されている思潮社の『現代詩手帖』2月号にこの活動について寄稿させて戴いております(【特集】抑圧に抗して 世界からの声ー柴田 望 「冷笑に抗う声」)。ぜひお読み戴けましたら幸いです。