■電気は消えても詩の灯を絶やさず、これからまた大きな余震が来て停電が起こったりしますとどうなるかわかりませんが、北海道立文学館にて9/22土~11/18日迄行われる予定の特別展「極の誘ひ―吉田一穂展 あゝ麗はしい距離、」関連事業として、詩の朗読会が11/4日に行われます。「一穂への遥かなる最弱音(ピアニッシモ)」に、出演・参加させて戴きます。
自然の暴威にさらされながら、こんなことをしている場合ではないと思われるかもしれませんが、詩はもともと、日常に潜む、または日常にあきらかに顕れていながらにして誰もが見て見ぬふりをしている深い亀裂を、言語の技法で気づかせるものであり、その技法とは、人類が獲得してきた言語以外のあらゆる創造技法を想起させるものであり、過酷な状況下ですっくと立ち昇る詩があります。
道内の名だたる詩人の皆様がご参加、ピアノ演奏と共演の試みもあります。(フラジャイルより、木暮純さんと柴田が参加致します☆)皆様のご来場をお待ち申し上げます。
*
「一穂への遥かなる最弱音(ピアニッシモ)」
― 道内の詩人たちがお気に入りの一穂の詩と
その詩にちなんだ自作の詩を朗読します。―
11月4日(日)13:30~15:30 北海道立文学館講堂
朗読者:
大島龍
加藤多一
木暮純
木田澄子
櫻井良子
佐藤裕子
柴田望
菅原みえ子
瀬戸正昭
高橋純
嵩文彦
長屋のり子
花崎皋平
村田譲
渡辺宗子
渡会やよひ
ほか
協力 : 北海道詩人協会
※聴講無料 要申込
10/19 9:00から電話にてお申し込みください。定員60名。
*
-*-*-*-*-*-*-*-*-*
「 粉 」 柴田望
*
バンコクのウォーキングストリートには
あらゆる言語 肌の色が混じるのに逆らい
車道に眼を落とせば 信号待ちの表面張力
コップの底に溜まる粉のごとく バイクと
クラクションの群れが満たす 六車線の日本車の隙間を
*
バンコクの電柱には 百本以上のケーブルが巻きつけられている
日本ではせいぜい一〇本程度だ 法律で許されないはずだ
あんなに見事に 頭上に織りこまれて 何が遠くと絡むのか
*
見たこともないほど過大な屋外広告 日常を剥がす
オカシイのはどっちだ? 窓ごしリングで殴りあい
観客も黄昏 勝ったほうのぶんかに染められていく
膨大な修正の過程を胃壁へ流し 「都市素描」を浮かべる
*
( 街
白金の幾何学
高層建築の光の祝祭
あゝ鮮麗な空間の形 )
*
バンコクのデパートの書店に詩のコーナーは無い
この瞬間、どこへも出かけず ホテルの部屋で
一穂の詩を他国のコースターに謄写している観光客は
他にいないか? …SNS検索するソフトクリームの溶度で
レンブラントホテルのプールで水着なのは 白人と日本人だけ
鱗粉を禁則に孕み ふりがなのごとく針金を緩ませ
アルファベットのお土産を売る現地の若者を背に
仲間たちはふきだしくり抜かれて 夜の街へ溶けていった
*
( 不眠の華に晝く屋根裏の月 )
*
( 有機解體の頽廃期へ分裂し下降していく )
*
※()内は吉田一穂の作品「都市素描」(詩集『海の聖母』)より
*
北海道立文学館で9月22日より行われる特別展「極の誘ひ 詩人吉田一穂展 ―あゝ麗はしい距離(ディスタンス)、」に向けて
http://www.h-bungaku.or.jp/exhibition/future.html#sp201809
*
極の誘ひ 詩人吉田一穂展 ―あゝ麗はしい距離(ディスタンス)、
会期:2018年9月22日(土)~11月18日(日)
*
詩人吉田一穂(よしだ・いっすい、1898~1973年、渡島管内木古内町出身)が生誕して120年。 「海の詩人」「孤高の象徴詩人」「日本のマラルメ」と呼ばれ多くの芸術家らに畏敬された一穂は、少年時代を過ごした積丹半島の古平町を<白鳥古丹(カムイコタン)>と呼んで詩的インスピレーションの源泉としました。 本展では、詩集『海の聖母』『未来者』『白鳥』などの代表作をはじめ一穂の詩業を、その書画とともに紹介します。東西文明への深い洞察力と鋭い批評性をたたえ、今なお近代詩の極北に位置づけられる吉田一穂の世界をご堪能ください。