詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■「ドライブ」  柴田望

「ドライブ」          柴田望
 

山の上の景色は晴れている 厳かで天界に続く
麓の天気は荒れている 謀略は渦巻く
 
雲の上の温かい気流に溶けて 感謝して 
恩返しすれば きみは友だちと出会う
 
雲の下の嵐に復讐する 争いに夢中なら
(だんだん)友だちをなくす
 
見えるものだけを信じて 裏切られたと嘆く 
それはきみが得をするために 
見えない何かへ 裏切りを重ねた証拠だ
 
今の景色は 今だけのものだ
保存できない 朝と夜 季節が 
感情によって螺旋を描く 
混ぜる祈りの量も変わる
 
永遠に泣きやまないきみと
ドライブした (だんだん)二人で笑った
 
雲の下と上 片方に留まることはできない
この瞬間 この国も 両方を行き来している
 
片方だけでは磨けない
両方が(だんだん)磨く
暁の海に映るのはシンフォニーである
その気づきがはじまりの音だ
 
もう決めているのだ
永久に雲の上へ行かなければならないとき
その旋律を辿ろう
きみが生まれる瞬間に 傍で聴いたから
忘れるはずがない
 
2019-11-07.

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