詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩誌「UltraBARDSユルトラ・バルズ」Vol.32

■詩誌「UltraBARDSユルトラ・バルズ」Vol.32を拝受致しました。誠にありがとうございます。モニーザ・アルヴィ、アニス・コルツという二人の外国の女流詩人の翻訳が掲載されている。勉強不足な私にはこのお二人のことを知らず、日本語のウィキペディアにも掲載さえておりません。有働薫さんのアニス・コルツの説明を有難く拝読し、どこか荒地派のような戦後文学の緊張感が漂うことを納得。「各々の存在は他者の/囚人になる/部屋を通り抜ける/死者の声が聞こえる」「動物のように/毛皮の下に身をひそめて/一生の間/わたしは死と対話を/しただけだった」 これらの引き絞られた詩句に、時代を超えて存在の意義が撃たれるように感じられます。つい70年前に発せられた言葉と現代の言葉の重みに大きな格差が生じているよう…。
 人間のまじめくささを哄笑する、しかし温かいユーモアのこもった詩句の繰り出される細田傳造さんの二篇、「特殊事情があるわけではない」を拝読し、これも戦後の詩、軽い語り口なのに決して軽くはない、見事に切り込まれる「特殊事情があるわけではない」の一行に、「あるわけではない」はずなのに、この詩にはまったく一語も書かれていないあらゆる事情を、歴史を、読み手(私の勝手な読み方で恐縮ですが)に想起させる見事な催眠術のよう(「〇〇しないで」と禁止されると、したくなってしまう?呪術的反語のような)。「特殊事情があるわけではない」と見事に言い切る詩人の生き様。素敵。

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