詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■2019年11月12日(火)の北海道新聞夕刊【道内文学・詩】より

■本日11月12日(火)の北海道新聞夕刊【道内文学・詩】(全道版)三角みづ紀さんの評より、柴田の詩集『顔』(ムゲンブックス)をご紹介戴いております。誠に、ありがとうございます。「柴田望は投げかける。問いを、問題を、世界で起こっている事象を。あくまで詩として投げかけるのだ。」…恐縮の至りです。

 今年、何度も読ませて戴き、勇気を戴いた番場早苗さんの詩集『一瞬の、永遠の、波打ち際』(響文社)のことが大きく書かれている今月の【道内文学】にご一緒に掲載戴きましたことも嬉しく。(『顔』には5月の豊平館の朗読会で番場早苗さんに聴いて戴きたくて朗読した詩「游」も収録致しております。)

 『顔』は、ひっそりまとめた冊子にて、あまり多くの方へはお知らせ致しておりませんでした。現代詩にしてはパンク過ぎると思ったし、読み返す勇気もなく、複雑な臆病さから、お世話になっている方々へもこの本を送れないまま、「フラジャイル」の活動と全国より戴いた詩集・詩誌への御礼を書くのに夢中でした。しかし、この一冊に、今まで自分が聴いてきた音楽、読んできた本、経験した仕事のすべてが詰まっているように何となく感じていました。

 三角みず紀さんに取り上げて戴いた詩「集合写真」は、先ほど長屋のり子さんからのメールで気づいたのですが、昨年5月に江別の「シアターども」で行われた「午後のポエジア」朗読会にて、柴田は宮澤賢治役でこの自作詩をステージで朗読致しておりました。菅原みえ子さん、長屋のり子さんの後ろでピアノを弾かせて戴き、憧れの斉藤征義さんにお会いでき、斉藤征義さんの「永訣の朝」を生で聴くことのできた最初で最後の日であり、村田譲さんの大迫力の朗読、ZYPRESSEN「春と修羅」が壮大で忘れられず。その後に発行された小樽詩話会(No.618 2018年10月)会報に掲載させて戴きました。
 
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「 集合写真 」 柴田望
  
してはならないことをかれは何度も繰り返す
なぜそれをやるか、誰も訊こうとしない
失礼ながらみんな じぶんの言いたいことを言っているだけだ 
じぶんの言いたいことを 聞いてほしいのはかれだけじゃない
つりあいをとっているのだ 迷惑をかける理由は 
そうすることでようやくつりあいがとれるだけなのだ 
そもそも何が言えるのだ? かれと同じ体験を誰もしていない
してはならないことをどうしても しなければならないほどの犠牲なのか
周囲だけじゃなく かれ自身わかっているのだ 
どうすればいいか その答えを・・・
 
たまに忠告するだけじゃダメだ こちらの行動を根本から変えなければ 
その覚悟もないくせに とやかく言っても見抜かれます
どうすれば解決するか わかっているから悩むのだ
重い腰が上がらないから悩むのだ かれ一人の問題じゃない 
わたしたち全員に与えられた課題 たましいの修行だから
解決しなくたっていいじゃないか 頭を寄せあって それでも解決しないから
みんなのためになるのだ かれのおかげじゃないか
卒業しなくたって(ダメだけど・・・)いいじゃないか
 
問題が舞台を去って してはならない過ちを繰り返すのをやめて 
忘れかけて 温泉旅行で撮った写真だ 家族みんなで撮った写真だ
みんな笑っている つりあいがとれているのだ
 
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心の整理をつけながら、遅くなるかもしれませんが、少しずつ皆様へ送らせて戴きます。

柴田望 詩集『顔』(ムゲンブックス)
https://www.amazon.co.jp/dp/4815012032
一応、バーコードもついており、アマゾンでは注文できるようになっております。10月5日に旭川文学資料館へこの本を含め3冊も柴田の本を持参され、サインを求めてくださったSさんに感謝。)

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