詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■安部公房 ~バロック音楽と映像による朗読会『魔法のチョーク』リハーサルを行いました。

■本日1月19日、東鷹栖公民館にて、25日(土)に行われる朗読会のリハーサルを行いました。会員佐藤道子さんによるピアノ生演奏(公民館のアップライトピアノを使用!)、コレッリのSonata "La Follia," Opus 5, No. 12をBGMに、同じく会員でフラジャイル同人である山内真名さん、冬木美智子さんによる作品朗読。本編は45分程度でしたので、あと40分ほど…詩の朗読や作品解説ができそうな感じです。当日までしっかり内容を練って臨みます。どうぞ宜しくお願い申し上げます!!

 旭川市東鷹栖ゆかりの世界的作家、安部公房の変形譚・反リアリズム文学(「本当のリアルを求めるために、反リアリズムの道を行かなければならなかった。」片山晴夫)の一つである「魔法のチョーク」は、1951年(昭和26年)5月28日に石川淳の序文を添えて月曜書房より刊行された安部公房の中編・短編集『壁』の第三部「赤い繭」に収められている。
 「変形を経験することで、主人公は、たしかに、自己の発見を、おこなう。非人間的状況に呪縛されている自己と、そういう在り方を拒否し、呪縛をきり払おうとする自己とを、同時に発見する。いうまでもないが、形成さるべき《私》は、変形した自己を超え出るくわだて、それを担う無形の自己を素材として、登場するだろう。
」(高野斗志美
 「無形の自己」とは、名づけることができないもの。無限の可能性を孕んでいる。世界の中で魔法を使っていたアルゴン君は、その魔法で世界を創ろうとしたとき、無機質への変形を強いられる。「アルゴン――すなわち、Ar。空気中に約一パーセント含まれている、一原子一分子、原子価0の稀元素であり、無味無臭、沸点低く、化学的に不活性。現代の芸術は、芸術そのものの自己否定からしか成立ちえないのだ。」(安部公房
 芸術に無限の可能性を与えるために、自己変革の新しい拠点を創るために、「変形」を発見する。
 自分が自分でなくなる
 日常が日常でなくなる
 当然のことが当然でなくなる
  →やがてまた、当然に変わる(変形)
 そのような情況をえがきだす
 書く行為そのものを通じて 
 (読者は読む行為を通じて) 
 存在について・人間の在り方について
 根源的な問いを発することができた

安部公房 ~バロック音楽と映像による朗読会
『魔法のチョーク』
「アルゴン――すなわち、Ar。空気中に約一パーセント含まれている、一原子一分子、原子価0の稀元素であり、無味無臭、沸点低く、化学的に不活性。現代の芸術は、芸術そのものの自己否定からしか成立ちえないのだ。涙は失われた芸術の句点である。」  —安部公房「覚え書――『魔法のチョーク』」

■日時: 2020年1月25日(土)
(開演 14 時 00 分  終演 15 時 30 分)
会場: 東鷹栖公民館 会議室 (旭川市東鷹栖4条3丁目)
参加費:  無料
主 催: 東鷹栖公民館 ・ 東鷹栖安部公房の会
お問い合わせ先 : 東鷹栖公民館 0166-57-2622

■2020年1月25日(土)、旭川市東鷹栖公民館にて、短編『魔法のチョーク』の朗読会を行います。安部公房初期の代表的な短編群の中でも非常に重要な作品で、1951年(昭和26年)に発行された『壁』に収録された三部作(「S・カルマ氏の犯罪」「バベルの塔の狸」「赤い繭」)のうち、「赤い繭」に収められた四つの短編(「赤い繭」「洪水」「魔法のチョーク」「事業」)の一つです。
 今回は、会員によるバロック音楽のピアノ演奏も行います(安部公房バロック音楽を好んでいたという資料記述がありました)。朗読は昨年の「棒になった男」でも朗読を行った会員をはじめ他数名のメンバーで行う予定です。ぜひ会場にて皆様のお越しをお待ち申し上げます。
 2020年も安部公房文学の素晴らしさを一人でも多くの市民の皆様にお伝えすべく、様々な取り組みを企画致して参る所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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