詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■旭川の詩誌『青芽反射鏡』No.8(2020年春)!!

■富田正一さん主宰、旭川の詩誌『青芽反射鏡』No.8(2020年春)が、ついに発行されました!! 昨日拝受し一気に読ませて戴き…あとがきに富田さんの「詩は装飾品ではなく魂だと思う」の一行に胸熱く、全ての仕事に通じるような、厳しくも美しい御言葉。
 
 荻野久子さんの詩集『記憶の風』の出版祝賀会のこと、集合写真も掲載されております。12月1日(日)、WEFグランデマルウンホールで行われました。11~12ページに紹介されていますが、道内外の多くの皆様から御葉書・メッセージが寄せられ、司会として嬉しく読ませて戴きましたこと、昨日のように憶い出します。
 
 詩作品、山田郁子さんの「舟を漕ぐ」、「―本質的にくだらないものはこの世に/存在しない、同時にくだらなくないものも/存在しない―」、くだらないかどうかを決めるのは人の価値観であり、それは時代の状況によって変わる脆いものでしかない。「時と場所の枷から解き放たれ/実態を失くした虚像が/万華鏡のように/次々連なって顕れてくる」。絶対のようにだれもが錯覚している。「この世界の隅々まで飛散する」光の情報の奔流に私たちは日々翻弄されている。闇に目を凝らし、沈黙に耳を澄まさなければならない。光と対極の夜の流れに、漕ぎだす舟になりたい。
 葵生川玲さんの「前と後」、「習慣」について、当たり前に過ごす時間の使い方が人生を変える、時代を変える。「習慣」を操ることが、見えない力の操作に対抗する唯一の術なのかもしれない。
 新同人!二宮清隆さんの「消えた手袋」、思考の歩行を辿りながら最後の二行の擬人法に、知らぬ間に失われていたことに気づく瞬間の運命のドラマを感じつつ、あるとき父に大きすぎる手袋をプレゼントしてしまったことを憶い出していました。父の手はとても大きいと、子どもの頃からずっと思っていて、大人になって自分の手の方が大きくなったことに、まったく気づきませんでした。
 形のないもの俤を見事に捉える志々見久美子さんの小詩集に心洗われ、浅田隆さんの「緑燦燦―富良野盆地 夏―」の「みはるかす盆地の この厚みはどうだ…/息づく生命たちの この温みはどうだ…」の大自然のヴィジョンに圧倒され、富田正一さんの「第三の人生」は、以前「生きる」という題名の御作品であったと記憶致しております。2018年9月29日、フィール旭川ジュンクギャラリーで行われました展示・朗読会「青芽からフラジャイルへ」の際に、柴田が朗読させて戴いた富田さんの御作品であり、何度も練習した作品ですので忘れるはずがなく、今でも柴田のスマホの中に入っており、「生きるとは/時間を大切にすることだ」人生の時間の味わい方を教えてくださる傑作に、見事な推敲が重ねられている。
 
 前号についての感想、ブログに書かせて戴いたものですが、本号(6ページ)に掲載を戴いております。誠に恐縮です。

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『青芽反射鏡』No.7を読んで     柴田望
 
『青芽反射鏡』№7落掌深謝。ささやかな御礼を含めて読後感の短評を書きました。同人十七人の詩やエッセイや詩評など、六十四ページの充実した一冊(裏表紙にはイメージソングも「明日に向かって(2)」も掲載♪)。荻野久子さんの新詩集『記憶の風』の評を、二宮清隆さんが見事な視点で(永遠の少女の眼)で時代を告発しながらも自然と同化し風景を美しく歌い上げる」と書いている。「日常茶飯事こそ不可解な詩的世界ではないのか」「日常という不安定なおぼろの中を、限りある命として生きている」。
 詩作品やエッセイ群も、「詩の着想と構築はこのような気づきから展開されるのだよ」とお教えくださっているよう。反射とは光の波動。各同人による選び抜かれた詩語が独自の余韻を放つ。星清彦さんの「幸福論」は「幸福」の時代による変化について、葵生川玲さんの「江陵」は滝川市立江陵中学校と韓国の江陵(カンヌン)市について、宮沢一さん「父のように、母のように」はご両親を書きながらご自身と向き合う深い考察、志々見久美子さんの「温暖化」は「太陽」の恵みと宇宙自然への畏怖。
 最新技術で航空写真のごとく高みから見下ろす視点(世界視線)と、日常の倫理の中で肉眼で人や物事と触れ合う生の視点(普遍視線)が多重層に折り重なった言語空間が詩であり、どちらが欠けても物足りないものになってしまうのかもしれませんが、とくに後者(普遍視線)が着想以前から各詩人の根幹で長い時間をかけて育まれ、それが前者(世界視線)の表現に気づかぬうちに活かされ、読者に届き、深いところでの信頼・共感を得ることができるのかもしれないと感じております。貴重な勉強をさせて戴きました。
 富田正一さんと荻野久子さんの御作品も、身近な主題から生命の根幹について、主題を明確に言語が絞られ、密度の高い行を醸成。詩人の着目する世界に与えられた言語の意味が表情深く多様に彩られている。(「フラジャイル」代表)

(「青芽反射鏡」No.8 《風のエッセイ》より)

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