詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

詩誌「くれっしぇんど」108号(2019年12月号)

■詩誌「くれっしぇんど」108号(2019年12月号)、御恵送賜り、誠にありがとうございます。
 同人の皆様の作品、エッセイ、望月光作品集「風のある眺め」より三篇(「挿話」「半分序」「半分1」)、興味深く拝読させて戴きました。光の窓の旅が、芭蕉の、義経の、御自身の幼児期の、時代を超えた空気を見事に景色の中に捉えていて、導かれました。
 大野千賀子さんの「間違い電話」。とっさに掛けられた間違い電話の声への反応を、乱暴に切るか、寛容に応答するか。「「ハイ ハイ」と答えられそうだ/梅雨寒むのこんな日には」優しいまなざし。「息をととのえてから/自分の乱暴さ加減を反省」する気持ちの大切さ。大変な時こそ持たなければならない。詩が時代を育ててくれる。
 高橋絹代さんの「あやとり」。先日、ある介護施設でスタッフがあやとりをして入居者を喜ばせている場面に遭遇したことを想起しつつ拝読。今の子どもたちにはできるのだろうか。「朝顔の花」「ゴムヒモ はしご」「さかずき 鉄橋」「川 電球」。「一本の毛糸で」どうやって作ることができるのか。「うまく形にならず/すぐほどいてしまう」人もいるという。うまくいかない分だけイメージの深まる創作のよう。「夢の世界」はテーマパークだけにあるのではない。
 坂井一則さんの「過」(過(あやま)たず)(過(あやま)つ)、コントラストの二篇が一つの文字から展がる詩世界。「つねに/過つ世界に在るものたちに/日常は容赦ない」。「己の本能を貫」き、「己の本能に背(そむ)く」、過ちがあるからこそ定めがある。「己の在りかを見出す」ことができる。「過たず」と「過つ」を何度も繰り返す。問いの軌跡。人類の歩み。

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