■昨年の11月にお送り戴いていた詩誌「饗宴」Vol85をようやく拝読。ありがとうございます。(昨年雪の降り始めた頃から怒涛の忙しさで何もできずにおりました。申し訳ございません。)もう次の号が出ているらしいという噂を耳にしております。
冒頭の星まゆみさんの「モルヒネ」に魂を揺さぶられました。「あの世とこの世を結ぶ橋が/粉雪をかきけして現れては消える」、境界としての一枚の窓に響く「空気を裂いて叫ぶ」声の呼吸の地点。苦しさから解き放たれる「ゼロの地点」。生の世界に居ると同時に、生と死の狭間に立たされる存在の私たちを照らす睦月の空にくっきり浮かぶ月、与えられた沈黙の奥行き。手の届かないところにある目印を頼りに、顕在意識を潜在意識を行き来する。どちらが広いか。私たちが領域に生かされている領域は広くて狭い。
二つの世界の境界を細野豊さんの「それが奇蹟だと思うようになったのは…」も見事にえがきだしている。左右前方から閉まってくる鉄製扉の存在に気付かずに扉の向こうへ出た。車の両側の擦れ傷から、間一髪で扉をすり抜けたと知る。「ただ残念なのは この奇蹟が奇蹟だと分かってくれる者が/ひとりもいないことだ」、それが本物の奇蹟の証か。