詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

詩誌「まどえふMADOEFF」第34号(2020年春)

■詩誌「まどえふMADOEFF」第34号(2020年春)を御恵送戴きました。心より感謝申し上げます。
 吉田正代さんの「アニメーション」に注目。題名以外と「バスストップ」以外はすべて平仮名で書かれている。アニメーションとは複数の静止画像により動きを作る技術。バス亭におばあさんが並ぶ、おばあさんにお友達のおばあさんから手紙や電話が来る、そろそろ夏が終わる、うなずく、と言った静止画から動きが生じる。昨年の北海道は暑かった。「68年ぶり/9日連続/真夏日/札幌」と最後に小さく記されているが、気温が高いと時間が止まっているように思えるのは何故か。永遠のようでいて、「まいとし/そうおもう/ことになっているのかな」錯覚に陥る。アニメーションは錯覚の魔術。
 橋場仁奈さんの「ゆきのひ」の白と赤のコントラスト。昨年発行された詩集『半球形』の牛の屠殺がえがかれた「吊るされて」や、『朝、私は花のように』収録の「叫び」の混沌、坩堝を憶い出しながら、何度も読み返し展開に引き込まれる。「痛みがはしる左手親指の腹にはしる 血があるく/盛りあがって ぷくんと盛りあがって小さい玉に」なった血の赤、「雪のなかで切られた喉の細長い」首のない屠殺されるニワトリの血の赤、「切り口から叫びをあげて ほそいいのちの影を映して/ゆらゆらとのこりの声の喉の奥にたまった声のゆくえよ/血をふりまいててんてんと雪の上にてんてんと」。雪とウサギと蝋燭と凍った餅の白に、まな板からすべって包丁が飛び、左手親指の、首のないニワトリの、血の赤、朝日の赤が父、母、姉、兄たちへもイメージの速度で伝わる。「モナは洗って食べました だまってあなたにも/食べさせました 少し血の味がして美味しかったです/まな板も包丁もきれいに洗って/じゃぶじゃぶ洗えばこの世はすべてだいじょうぶ」。手洗いが励行される。〈非常時〉が宣言され、密集を避け、作られたイメージが猛威を振るい全世界へ拡大する。集計が色付けされる。そのうち「だいじょうぶ」に転ずるのか。どこかで白に転ずるのか。

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