詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■『アンバル・パスト詩集』(土曜美術社出版販売)

■瀬戸正昭さん主宰の「饗宴」に大きな広告が掲載され、『詩と思想』3月号にも特集されている細野豊先生編訳の『アンバル・パスト詩集』(土曜美術社出版販売)を御恵送賜りました。心より感謝申し上げます。
 細野豊先生による巻末の解説(「米国からメキシコへ帰化した女性詩人アンバル・パスト」「松生い茂る森の帰化詩人」「米国の物質文明を心底で批判する森の詩人アンバル・パスト」)を手掛かりに、米国からメキシコへ帰化し、現在はヒマラヤの山中などを放浪する詩人の作品を拝読。一読して日本の詩人による作品との大きな違いとして、詩が《神》に近い、詩句が《神性》を帯びているということが強烈に感じられる。太陽に太く繫がっている、信仰というよりも生活文化の感覚そのものが神に近いというべきか。そして頭で書いているのでなく、全身の肉体を用いて書かれている。言葉に宿るある意味魔術的な力への信頼が日本の現代詩と比べて圧倒的に強い。詩が、日常の些細な出来事や繊細な心の動きなどではなく、大宇宙に対峙していることに気づかされる。「全ての者は詩人であり、詩には病を治す力をもあると信じられていた。私はあのように人間的で詩的で、魔術的なものを求めていたのです」(「好書好日」https://book.asahi.com/「放浪の詩人、アンバル・パストさんインタビュー 世界に散らばる「詩」書き記す」2020.01.06) 言語が結びつける現実と伝承の神話、大自然を育てる太古の太陽、金のための戦争、虐げられたものたちの怒り。死者を弔う魂の儀式。「あなたがわたしに贈ってくれたすべての花が/いまわたしたちの死者をつつもうとしている」「わたしは心の中であなたの名前のついた遺体を洗い、/灰を身に纏うところだ/あなたとともに/わたしたちの最後の夜会をとり行うために。」(「通夜」)。

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