詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■かわいふくみさんの個人誌「PENDAKO」(2020.6 21号)

■今年、文化企画アオサギさんより話題の詩集『かおをつくる』を上梓されたかわいふくみさんの個人誌「PENDAKO」(2020.6 21号)を拝受致しました。心より感謝申し上げます。詩作品5編(「尺取虫」「余韻の外」「靴を履くいきもの」「ひっかかっているもの」「水平線」)を収録。時代の動きを知覚し、私たちがどのような仕組みの世界にどう生きるか、根源的かつ軽妙な問いが文明に投じられる。
 「道端に
  底の抜けた片足分がころがっている
  行方不明の井戸は
  どこを歩いているのか」(「靴を履くいきもの」)

 「生命線は伸び縮みするのか
  焼く前に実年齢と照合したのか
  これまでヒトが超えたことのない生命線
  その先に待ち受ける
  滝つぼ 骨つぼ」(「水平線」)

 「乗り遅れたフリをしたことがあったとすれば
  そのあとわたしは追っただろうか
  放棄しただろうか」(「余韻」)

 「尺取虫のあれは/リーチだろうか/ストライドだろうか」の問いで始まる冒頭の詩「尺取虫」に注目。「とてつもない距離」つまり地球の円周を、「じぶんの尺度でじぶんを手繰り寄せていく」。「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行く、ただ一つの道」というイチロー選手の有名な言葉を想起しつつ。「ロイター板を蹴る/跳んであたりまえという距離」と尺取虫が「のびて縮んではずみで/宙を蹴った」距離の放物線。ヒマワリの首のカーブと重なり、種が土に還るとき、尺取り虫と同じくらいの芽が出るまでの距離と時間を、高速なスローモーションで想起させる。どんなに行き先が遠くても、例えばペンだこの直径くらいの小さな一歩を躊躇してはならないと教わりました。

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