詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩誌「晨(shin)」第21号(2020.6 代表 中尾敏康氏)

■詩誌「晨(shin)」第21号(2020.6 代表 中尾敏康氏)を御恵送賜りました。誠にありがとうございます。同人17名の皆様の詩作品、エッセイ、詩書紹介。60ページぎっしり、詩質高き詩誌。
 翻訳に関する興味深い巻頭詩「あおむし」を書かれている新井良和氏の「訓練」。信号待ちの都市の車道に突如現れる操縦訓練中の装甲車二両。「長くて細い砲身は/何に向けられるのだろう/街中で見るものなのか」。記憶は四歳の頃へ。叔父から贈られた砲身のついた木製のタンク。「弾は出ない/カルタがほしかった」...知らぬ間にあらゆる場所へ向けられている砲身の訓練、実戦、世界の至る所で。6月19日、政府は陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回。今秋にも有識者による懇談会を設置し、国家安全保障戦略(NSS)の初改定に向けた議論を本格化させる。
 原島里枝氏の「めしべの心皮」、地下の子葉の栄養を使って本葉を展開し、本格的に光合成を始める子葉性の植物が紋白蝶によって命を運ばれ「受胎/擬態」、「異端/花弁」蝶が蜜を吸う様と、医学用語を想起させる「穿刺」、吸引される水と、「大音を立てて春仕舞う」宇宙からの疎雨、「「何処から雨を知ったのですか」「「浄土の匂いが立ったものですから/心のかたちを手さぐりする、内腔/笑ってみれば浮かび上がるか檸檬水」。「肺胞の一つ一つまで」…自己複製できる高度な遺伝情報を持った生命体、小さな芽も、人体の顕れも宇宙。「受胎/擬態」も「不妊/粘性」も宇宙で起きる。宇宙は永遠に完成しない。「眸は開いていくか/未完了へと」。 
 秋山公哉氏の「飛行機雲」により、「特異日」(偶然とは思われない高い確率でその天気となる日)という言葉を初めて知りました。今月初旬、夜中に凄まじい雷鳴が響き、瞬間豪雨が市内を襲いました。昨日、あれはいつだったかとある人に聞かれ、SNS等を調べてみると6月4日の未明でした。「記憶にも残らないほんの一瞬」に続く、来年、再来年の6月4日を待ちます。

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