詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■西原真奈美さんの新詩集『光りのパース』(2020年7月5日)

■西原真奈美さんの新詩集『光りのパース』(2020年7月5日)を夏の眩しい光の中で歩きつつ、拝読させて戴いております。
〈パース〉とは透視図(Perspective drawing)。
立体の絵。
光は見えるだけでなく見えないものでもあります。
 光り過ぎる真昼を かき回して歩いた
 乱暴にすくっても
 大丈夫であるように
 折り返したジーンズの裾に
 光りのおりを ためる
 (「見えない同心円」)
光とは、澱(おり)となり、
溜まるものであるのか
気づかずに溜めてしまい
枯らせてしまった光がどれほどあるか
円を描くように 歩行は呼吸であり
光を匿う折り目を伴う
 「吐くことだけを意識して、吐けば自然に吸うの」
 陣痛室で過呼吸を起こしたわたしに
 助産婦さんの言葉
 (「唇」)
ランドリーのドラムのごとく
乱暴にかき回され、ゆさぶられた
時代の至る場所にひそむ光
迎え火と送り火 月と朝 春の熾火
誕生のために応援される呼吸の深い折り返し地点から
りんかくの空へ浮き上がらせる希望の透視を
心より感謝申し上げます。

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