詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■「Asgard」No.3(November 2020) !! (〈存在〉について)

■「Asgard」No.3(November 2020)を拝受致しました。心より感謝申し上げます。
 以前、河合隼雄まどみちお論で、井筒俊彦の言葉を例に、次のように書いていました。「意識をずうっと深めてゆくと、それらの境界がだんだんと弱くなり融合してゆく。そして、一番底までゆけば〈存在〉としか呼びようのないような状態になる。そのような〈存在〉が、通常の世界には、花とか石とか、はっきりしたものとして顕現している。従って、われわれは「花が存在している」と言うが、ほんとうは「存在が花している」と言うべきである、というのである。」「「あれ、あんた花やってはりますの。私、河合やってますねん」とあいさつしたくなってくるような」(河合隼雄(『おはなし おはなし』朝日文庫、2008年)世界観。〈存在〉が「岩石」している、「化石」している、「鉱物」している。あなたは「蝉」やってるの? わたしは「ヒト」やってます。普通で考えると凄く変わっているように思えても、熟練の詩人は当然の表現手法(擬人法)で軽々と顕す。「純粋に認識する主観にしてみれば、他のものと同様の表象の一つにすぎない」(ショーペンハウアー「意志としての世界」)。「信頼したまえヒスイミンミン女子よ」と女子蝉に話しかけ、短い命を虹色に輝かせ(佐相憲一「世界はヒスイミンミン」)、土地の欅の老木を「現れては消えてゆくさま」の証人とし(道輪拓弥「人形(ひとかた)の土地の記」)、岩石、化石、鉱物に部活動の人間関係を与える(若宮明彦「岩石倶楽部」「化石倶楽部」「鉱物倶楽部」の三部作)。「フィールド危険生物外伝」を興味深く拝読。わくわくする不思議発見。「あれ、あんたサソリやってはりますの。」…ハブも熊もアムールトラも〈存在〉。かけっこで転んでしまい、うずくまっている少年の〈存在〉は地球だろうか。いまはコロナでつまずいている。希望を失ってはならない。少年は「つばさを手に」する。
 
「さあ、いまからその太い腕を
 大気圏まで突き出すときだ
 覚悟はできているかな?」
(小篠真琴「つまずいた少年」)

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