詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■《現代詩書下ろし一詩篇による詩集・懐紙シリーズ》第三集、木内ゆか詩集『【気密のストロー体】』(阿吽塾・2020年12月21日・限定250部)


  ふれきしぶる
   フラジャイル
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 (木内ゆか『【気密のストロー体】』)


 再度、詩人・木内ゆかさん(「詩の牧場」「フラジャイル」同人)の詩集について。「阿吽塾」綾子玖哉氏の発行される、《現代詩書下ろし一詩篇による詩集・懐紙シリーズ》第三集、木内ゆか詩集『【気密のストロー体】』(阿吽塾・2020年12月21日・限定250部)。17ページの一篇が収められた一冊の詩集(「阿吽塾」の新しい試みである《懐紙シリーズ》第一集は小笠原鳥類氏『『吉岡実全詩集』の動物を見る』、第二集は高塚謙太郎氏『詩篇Aa』)。スミカッコ(【】)もタイトルの一部なのでしょうか。「密」が禁じられた今、「鬼滅」ではなく「気密」の、無限のストロー繊維を持つ生き物である私たちの住む、組織体の管だらけの都市に、インプロヴィゼイションの管弦楽またはパイプオルガンによる、モダンジャズの、長い長いソロのような、アイディアに富んだフレーズの応酬を、ありがとうございます。爽やかな粘着質のどろどろとした内部で、語の閃き!を、飽きることなく聴き続けています。インタープレイのような「【自我と非自我】/【ポジとネガ】/【君と僕】とが/入 れ/変 わ/りそう・・」共同と個人、顕在と潜在の意識の透明の通路を光の速さで行き来する、一義的には捉えられない複合を刹那的に生きる瞬間が刻まれているよう。


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残存していたミュージックが【組織】のパイプから立ち昇り
タイルの小宇宙を満たしている。四十度前後で
ストロー繊維の結束はゆるみ ビニール素材もやわらかくなる。ピンク色の
【大根組織】が気道から発する「コエ」の流れはのびやかな夜だ。
蛸も クラゲも 裸電球も ホオズキの中でゆらぐのだった。
組織は綿の布団に包まる。吸盤が目を閉じると
星々がうたう。
 (木内ゆか『【気密のストロー体】』)

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