詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■渡辺宗子さんの「弦」79号

クロネコヤマトメール便が、うちは届くのがいつも遅いものですから、1月4日(月)の夜にようやく拝受しまして、見慣れた「弦」の封筒を拝見し、玄関でしばらく立ちすくみ、年末の訃報をいまだ信じられず、情けなく泣いておりました。信じたくない気持ちに向き合わなければならないと、開封する勇気を奮うまで数日かかりました。渡辺宗子さんの最後の「弦」79号。嵩文彦さんと長屋のり子さんの連名の御挨拶文が同封されておりました…胸熱く、誠にありがとうございます。
 詩篇「花の好きなうし」、渡辺宗子さんらしい、時代を照射する鋭いまなざし、現在のパンデミックの状況に重ねられるように、10年前の伝染病(口蹄疫)家畜の処理、強制誘導される幾万頭のなかに、動かない一頭を幼い少年の声(うた)だけが導く、レンゲとコスモスに囲まれた、子どもたちの輪と光のイメージ。今新型コロナ感染の時代を生きる、集計される私たちは何に導かれて進むのか。
 嵩文彦さんの詩篇「しゅったつ」、新しい時代に踏み進まねばならない試練を人類は経験しています。もう戻れない日、たくさんの笑顔に満ちていた時。「しづかにながれているのだった/花のたそがれのかおりを/たいせつにたくわえた/深淵はかすかなあかるさにうるおっていた」という詩行と「白いバス停」「白い時刻表」という詩句で私が想起するのは、嵩先生も渡辺宗子さんも参加されていた、ある9月の朗読会、小樽白鳥番屋のバス停です。「祝津3丁目」で降りては早すぎて、「祝津」で降りなければなりません。あの白鳥番屋で…当時、私生活が完全に「詩生活」になっており、道内のあらゆる文学のイベントに参加致しておりました柴田を「あなた、仕事があるんじゃないの?こんなことばかりして…」と叱ってくださったのは宗子さんだけでありました(笑)。北海道横超会でもご一緒で「弦」を創められた経緯や御活動の経験について等、何度か貴重なお話を戴きました。宗子さんに言われましたのは、詩誌の活動で大切なのは、例えば有名な方の寄稿を戴くことが目的ではなく、詩のグループの諍いやしがらみでもなく、純粋に詩を読んで、学んで、書いて、発表していくこと。書くことは「秩序に対して挑戦していくこと」、「抵抗と批判の精神」を詩想とすること。お教えは一生忘れません。感謝を言葉では言い尽くせません。申し訳ございません、まだ考えが整理できておりません。また改めて書かせて戴きます。

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