詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

■詩誌「錨地」No.74 (錨地詩会 2020年12月)

■詩誌「錨地」No.74 (錨地詩会 2020年12月)を昨年末にお送り戴いておりました。誠に、ありがとうございます。
 毎号、楽しみにしている入谷寿一さんのアイヌの民話をモチーフにされた御作品(72号の「キンカムイ」、壮絶でした!)、今号は「民話 木葉木蒐」、オコタントーで迷子となり、魔女にさらわれたヘラチ(男の子)の伝説。なんと木葉木蒐(フクロウ科 コノハズク)に姿を変えて母親に啼く。参照文献に更科源蔵の『アイヌの民話』。
 宮脇惇子氏の「秋の日」、「この水の色は何という名を持っているだろう」の一行から、「この水」が世界じゅうの至る所、あらゆる時代の水面となり、無限の色彩を放つ。季節は秋、冷たく冷える池の水面に「万の色を持つ/小鳥の重奏が/優しく降ってくる/それぞれに聴き分けられるほどに/ゆっくりと」まさに奇跡の音楽。
 笹原実穂子氏の「デオキシリボカクサン」、印象的なタイトル。二重らせんのデオキシリボ核酸は、遺伝情報の継承と発現を担う高分子生体物質。カラスの低空飛行を、ミニチュアダックスがトラックに吠えながら向かっていく行動。「やはり生命は/強いものに憧れ/従うのだろうか」という詩人の問い。弱肉強食の世界でも、進化論上は「変化に対応する」種が生き残った。年末年始に読んだ『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)では、7万前に目に見えないもの=フィクションを信じる力を得て、宗教や、国、法、軍隊を創ることのできたホモ・サピエンスが生き残った。いまも人類は他の生命を脅かす。その意味では「真意なのかもしれない。」

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