「 領域 」 柴田望
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報道と市の認識に「隔たりがある」
隔たりが招いたのか
調査する側の都合で変わるのか
教科書が笑う
当時の航海技術では捕虜を運べません
シベリアに抑留なんてありえない
加害者の中から生まれたのか
どちら側かを決めるのは力か
教科書から消したのだ
黒珊瑚と呼ばれた詩人が
少女の心に寄り添い書いた記事を ※
九州大刀洗飛行場、加世田市万世飛行場で
死地へ赴く仲間を見送った
十八歳で復員、これからは心の時代だ
「拠り所」を築くために
十九歳から九十一歳までの七十二年間
声なき声
言葉にならない言葉
表現の自由に生涯を賭けた
少年兵のいくさは終わりましたか
続きますか
領域が当然のごとく
奪われるものとしてある限り
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