詩誌『フラジャイル』公式ブログ

旭川市で戦後72年続く詩誌『青芽』の後継誌。2017年12月に創刊。

詩誌「ア・テンポ」(「ア・テンポ」の会 2021年5月)

■詩誌「ア・テンポ」(「ア・テンポ」の会 2021年5月)、こちらも山本眞弓さんより戴き、拝読させて戴いております。心より感謝申し上げます。
 赤坂恒子氏の俳句「生命たまはり」から始まり、中盤には梅村光明氏らによる連句(「隠し湯(糸蜻蛉)」)の試みも。日本の伝統的な言葉の芸術も、言語を扱う現代詩という器にとって大切に学ぶべきもの。俳句のように季節の花を題材にした坂本久刀氏の「百日紅」、さるすべり花言葉は「雄弁」「愛嬌」などでしょうか。「朝開いて/夕方に落ちる一日花だが/つぎつぎに/蕾をつけた花が/とだえなく/樹上を赤く染めている」…コロナ禍である年も、コロナなどなかった年も、震災の年も、戦争の年も、百日紅はこのように咲いて散っていた。「悪路があっても/逆境でも/今はこのままで/楽しもう」。「炎天下も雨の日も/自由に/楽しそうだ」。「愛嬌」のあるその様子から、何を「雄弁」に語っているのだろうか。
 梅村光明氏の連作詩篇「人間(じんかん)暮色」、石牟礼道子鶴見俊輔(「海」)、田辺聖子向田邦子「街」)、人物のエピソードを浮き出し現代へ届ける詩法。昭和の人と人との会話、マスクをしていない幾つかの顔、熱度の高い一瞬へ、時空を超えて読者を運ぶ詩の魔法。

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